科学技術振興事業団報 第149号
平成12年10月19日
埼玉県川口本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「オレフィン系ブロックコポリマーの製造技術」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎 雅弘)は、北陸先端科学技術大学院大学教授 寺野 稔氏の研究成果である「オレフィン系ブロックコポリマーの製造技術」を当事業団の委託開発制度の平成7年度課題として、平成8年3月から平成12年3月にかけてチッソ石油化学株式会社(代表取締役社長 竹下國幸、本社 東京都千代田区丸の内2-7-3、資本金 約20億円、電話:03-3284-8411)に委託して開発を進めていた(開発費約4億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、成形加工性などに優れ、かつ安価であるため、汎用プラスチックとして様々な用途に用いられ、大量に生産・消費されている。また、塩素やベンゼン環を含まないのでリサイクルしやすく、さらに、例えば衝撃強度が優れているエチレンプロピレンコポリマーをブレンドして耐衝撃性などの特性を付加したポリマーが製造されて自動車部品等に利用されている。しかし、ポリプロピレンとエチレンプロピレンコポリマーは本来混じり合わないため、このブレンド品は、ポリプロピレンに比べ透明性や光沢が低下し、衝撃を受けた際に白化しやすいなどの問題があった。
 本新技術は、ポリプロピレンなどのオレフィン類の重合反応が1ポリマー鎖あたり1秒以内で終了することに着目し、その重合初期に見られる疑似リビング性を利用して、まずプロピレンを原料として、1秒以内という短時間でポリプロピレンを合成し、続いて、エチレンとプロピレンを導入し同程度の時間でエチレンプロピレンコポリマーを合成することにより、ポリプロピレンとエチレンプロピレンコポリマーが結合点を持つ新規なブロックコポリマーを製造する技術に関するものである。
 本ポリマーは、耐衝撃性、透明性、熱安定性といった材料特性に優れ、さらに、2成分のそれぞれの特性を併せ持ち、かつ両ポリマーを混じり合わせる性質(相溶性)を持つため、単品で用いるほか従来のブロックコポリマーに少量ブレンドすることにより、種々の特性を持つ汎用高分子材料を作り出すことが可能になる。そのため、本ポリマーは、家電製品、自動車部品などの耐衝撃部材や高分子相溶化剤などへの利用、光学材料、医用材料などへの応用が期待され、また、塩素やベンゼン環を含んでいないため、廃棄物処理、再資源化という観点からも有用な材料として期待される。

「オレフィン系ブロックコポリマーの製造技術」の開発に成功(背景・内容・効果)

開発を終了した課題の評価

従来技術との比較(図1)

本新技術の概要(図2)

製造装置の概観(図3)

(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。
    科学技術振興事業団 開発業務部 管理課長 草野辰雄[電話(03) 5214-8996]
                  管理課 増渕 忍

    チッソ石油化学株式会社 総務部 部長 大衡一郎[電話(03)3284-8404]

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