科学技術振興事業団報 第140号

平成12年7月13日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「合金分散高導電性プラスチックの製造技術」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)は、豊田工業大学客員教授 中川威雄氏、および日本工業大学先端材料技術研究センター講師 野口裕之氏の研究成果である「合金分散高導電性プラスチックの製造技術」を当事業団の委託開発制度の平成9年度課題として、平成10年3月から平成12年3月にかけて新東工業株式会社(社長 矢野 武、本社 名古屋市中村区名駅四丁目7番23号、資本金 57億円、電話:(052)582-9211)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 プラスチックは軽量で成形性が高く、射出成形により様々な形状に加工できることが知られている。また、プラスチックは一般に絶縁性が高い材料であるが、逆に金属並に高い導電性を持たすことができれば、射出成形により自在な形状を製作することにより、これまでの技術では製造が難しい立体配線や家電製品の内部配線のプラスチックケースとの一体化が簡単にできるようになると期待できる。
 しかし、従来の導電性プラスチックは体積固有抵抗が10−2Ω・cm以上と大きいため、通電した場合に発熱して導電性プラスチックが溶解するので、電磁波シールドとしての使用には充分であっても通電用途には利用できなかった。また、プラスチックと金属成分の熱膨張差があるため、高温になると樹脂の膨張に伴い、金属の接触箇所が減少し、その結果として導電性が劣化するといった問題が生じていた。
 本新技術は、射出成形ができ、かつ導電性の高いプラスチックを製造する技術に関するものである。本技術では、熱可塑性プラスチック、錫合金及び分散補助剤となる金属微粉末を混練し、プラスチック中に合金を細かく連続的に分散させることで、高い導電性を持つプラスチックを実現した。本来、熱可塑性プラスチックと溶融した錫合金は分離して混ざり合わないが、本研究者らは、分散補助剤として銅粉等の金属微粉末を加えることで、樹脂中に合金を分散させることに成功した。本技術による高導電性プラスチックは、体積固有抵抗が銅の約10倍、鉄と同程度と導電性が高く、なおかつ、射出成形することができる。このため、自動車や家電製品等の電気系統におけるプラスチック筐体と一体になった導電回路や電気電子機器における三次元配線基板、スイッチ、コネクタ等の電子部品などに利用されることが期待される。

「合金分散高導電性プラスチックの製造技術」の開発に成功(背景・内容・効果)

開発を終了した課題の評価

図1.導電性と用途の関係

図2.導電性プラスチックの拡大図

図3.導電性プラスチックの製造と成型

図4.ペレット状の導電性プラスチック

図5.2色射出成形品とその断面拡大写真

(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。

科学技術振興事業団 開発業務部 管理課長 草野辰雄[電話(03) 5214-8996]
管理課 増渕 忍
新東工業株式会社 営業管理部 加藤裕介 電話[(0533)84-1182]

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