(1) | 選択的な神経細胞の死が基本になつているハンチントン病、脊髄小脳変性症、筋緊張性ジストロフィーなどの神経変性疾患の病因候補遺伝子に共通してみられるダイナミックミューテーションのメカニズムと病態との相関について明らかにすることを目指す。 |
(2) | 脊髄性筋萎縮症の病因候補遺伝子に推定されているアポトーシス抑制機能の発現機構と神経細胞死におけるアポトーシスの関与について明らかにすることを目指す。 |
これらの研究により、神経変性疾患(ハンチントン病、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症など)に係わる遺伝的機構の解明ができれば、これら遺伝病の治療に役立つばかりでなく、老化やがん化、老年性痴呆のメカニズムなどの理解にも重要な示唆を与えることが期待される。
用語の解説
1. | ゲノム |
すべての生物はいきるために必要な情報を細胞の中に持っている。その情報に従って形態が形成され、生命活動が維持される。このように個体の設計図である遺伝情報のすべてをゲノムという。ヒトのような高等生物では、ゲノムは染色体として観察される。 | |
2. | ダイナミックミューテーション(Dynamic Mutation) |
染色体には、長い二重らせんのひものようになったDNAが高密度で押し込まれている。このDNAのひもは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という四種類の核酸塩基が三個一組で意味を持つ言葉のように並んでいる。 ダイナミックミューテーションは、CXG(XはGまたはC,T,A)の配列からなる三塩基重複配列の増加を引き起こし、世代を経るたびに増加の一途をたどる変異。 | |
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3. | アポトーシス(Apoptosis) |
一般的に細胞死の形態については、ネクローシスかあるいはアポトーシスであるとの考えが強まっている。ネクローシスは重度の火傷や凍傷、打撲、切傷、高線量の放射線被爆、毒性化学物質との接触などの際に見られる急激で無秩序な細胞破壊を特徴とし、放出された細胞内物質が周辺細胞や組織に影響して炎症や障害を引き起こす。一方、アポトーシスは細胞本来の情報としてプログラムされている自己破壊のプロセスであると考えられている。自己破壊プログラムは、ウイルスや紫外線などの化学物質がシグナルとなって起動する。アポトーシスを起こした細胞は、核(染色体DNA)の分節化と細胞質の分断小胞化を経て崩壊する。放出された分節小胞(細胞内物質)は周辺の細胞に取り込まれて再利用される。この自己破壊は周辺の細胞や組織を巻き込むことなく進行することから、アポトーシスは不都合もしくは不要になった細胞を積極的に除くために獲得した秩序だった細胞死の形態と言える。 |
This page updated on May 14, 1999
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