新技術事業団報 第669号

平成7年12月14日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「低速陽電子ビーム短パルス化装置」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 新技術事業団(理事長 松平寛通)は、東京大学原子力研究総合センター 助教授 伊藤泰男氏らの研究成果である「低速陽電子ビーム短パルス化装置」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 低速の陽電子(ポジトロン、注1)のビームを照射し、物質の構造、状態などを調べる方法が、自然科学研究、あるいは、材料開発などでの新しい分析手段として期待されている。結晶中の格子欠陥や不純物、微小空隙などの分析を陽電子寿命(注2)の測定によって能率良く行うためには、規則的な短パルスの陽電子ビームが必要となる。従来の研究では、パルス化の過程において入力ビームを間欠的に遮ぎる機構(ビームチョッパ)を用いるため、大部分の陽電子を利用しないまま捨て去っており、高い照射強度(注3)を得るには大規模な陽電子源が必要であった。このため短パルス化などの精密なビーム調整を低損失で行える実用的な技術が望まれていた。
 本新技術は、貴重なビーム強度を大きく損なわずに低速陽電子ビームを短パルス化する装置に関するものである。入力ビームを常時受入れつつ陽電子が装置後段に達する時刻を制御する機構により、予備的なパルス化を行なったのち、各パルスを短パルスに圧縮し、入力陽電子を無駄なく利用する。本装置は、100ピコ秒(1ピコ=1兆分の1)レベルのパルス幅までの短パルス化が可能なため陽電子寿命測定を能率良く行え、強度損失が小さいため小規模のビーム発生装置の利用が可能となるもので、半導体、金属、高分子材料などの学術研究や製品開発での活用が期待される。
 本新技術の開発は、住友重機械工業株式会社(社長 小沢三敏、 本社 東京都品川区北品川5丁目9番11号、電話03-5488-8219)に委託する予定で、開発期間は3年、委託開発費は約4億円の予定である。

「低速陽電子ビーム短パルス化装置」(背景・内容・効果)

(*) この発表についての問い合わせは、電話048(226)5616 野田、天野までご連絡下さい。


This page updated on May 6, 1999

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