微小発破による尿路結石破砕技術


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
望まれていた、患者への影響が小さく普及し易い尿路結石破砕装置

 尿は、腎臓から尿管、膀胱、尿道を経て排出される。このような尿の通り道である尿路に、尿中の成分が析出、固化して停滞したものは総称して尿路結石と呼ばれる。我が国においては、尿路結石症は生涯で100人中5人がかかり、年間での患者数も10万人に達するといわれる普遍的な病気である。中でも、腎臓や尿間という尿路の上流側にできる上部尿路結石が9割を占めている。また、再発率も高いことから、手術をせず、患者に対する負担が少なく、より有効な治療法の確立が望まれている。
 尿路結石症の治療は、従来、手術が主流であったが、最近では体外で発生させた衝撃波を結石に集中させて破砕する体外衝撃波砕石法、尿道を通じて尿管内に砕石器具を挿入し、超音波あるいは電気水圧衝撃波で結石を破砕する経尿道的砕石法など、手術せずに結石を除去する方法が確立されてきた。
 しかし、体外衝撃波砕石法は装置が高価で厳重な管理下で扱う必要があるため、普及が大規模な病院に限定される。超音波を用いる方法は、挿入部分直径が大きく超音波の伝達部が剛直であるため、患者への負担が大きい。電気水圧衝撃波を用いる方法はアーク放電を利用するため、尿管を傷つける恐れがある、などの問題点があった。

(内容)
火薬でピンハンマーを駆動して尿路結石を的確に破砕

 本新技術は、細い管状の装置を尿管を通じて尿管内の結石まで誘導し、装置先端部に充填した微量の火薬を爆発させることにより、内蔵したピンハンマーを結石に衝突させて破砕するものである。(図2図3参照)
 生体内で火薬を爆発させ、その生成ガスを利用してピンハンマーを駆動させるが、密封容器内で行うため、患者の安全は確保されている。
 本装置は、(1)作動部、(2)誘導部、(3)操作部、(4)電源部で構成されるが、各部の詳細は以下の通りである。

(1)作動部  作動部は、装置の先端部に位置し、結石を破砕する機能を持つ。その構造は、先端が開口した直径3mmのステンレス製細管の中に1.2mmのピンハンマーと、その後方にピンハンマーを駆動するための火薬層及び電熱着火源が内蔵されたものである。
 内蔵されたピンハンマーは、着火された火薬の爆発力により結石に向けて最高時速約500km/hの高速で突き出されるが、先端から所定の長さだけ飛び出した後、太くなった尾部が細管開口部の狭くなった部分に阻まれて、停止する。
(2)誘導部  誘導部は、作動部の後ろに連結され、X線透視下で作動部を尿管内にスムーズに前進させるとともに、作動部先端を尿管内の結石に正確に接触させる位置合わせの機能を持つ。誘導部は尿管への挿入を容易にするための適度な柔軟性をもつチューブ状である。また、作動部との連結部付近を操作部からのワイヤー操作によって上下に湾曲させることが可能な構造となっている。
(3)操作部  操作部は、誘導部の屈曲を制御するためのワイヤー操作を行う機能を持つ。すなわち誘導部の湾曲部分からチューブ内を通して導かれた2本のワイヤーを、これに連結させた操作レバーの張力により、湾曲方向と角度を制御する。
(4)電源部  点火用スイッチと点火用電池などで構成され、作動部への火薬の点火を行う。

(効果)
簡単な操作、大きな結石破砕力、低価格などの特徴により、尿路結石症の治療装置として、広い利用が期待

 本新技術による尿路結石破砕装置は、次のような効果が期待される。
(1) 挿入部分は、直径が小さく適度な柔軟性を持つため、細くて湾曲した尿管への挿入が容易であり、患者への負担を少なくできる。
(2) X線透視下で挿入した装置の先端部分を、体外の操作レバーで湾曲させて結石に正確に位置合わせできるため、上部尿路結石を正確に破砕できる。
(3) 火薬の爆発を利用しているため、結石の破砕力が大きい。
(4) 装置は低価格である。

従って、本新技術による尿路結石破砕装置は、一般の診療施設において尿管結石症の治療に広く利用されることが期待される。


This page updated on May 6, 1999

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