新技術事業団報 第644号

平成6年12月21日
埼玉県川口市本町4-1-8
新技術事業団
電話(048)226-5608(企画調査室)

「導電材用高強度銅合金の製造技術」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 新技術事業団(理事長 松平寛通)は、科学技術庁金属材料技術研究所強磁場ステーション総合研究官 前田 弘氏、同ステーション定常磁場ユニットリーダー 井上 廉氏、同ユニット主任研究官 坂井義和氏らの研究成果である「導電材用高強度銅合金の製造技術」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 電線や電気部品などに使われる導電材料では、導電率を高く保ちながら強度(引っ張り強さのような変形に対する耐性)を高めることが、電気製品の小型化や信頼性向上、電気鉄道の高速化対策、大電流を流し強磁場を発生させる技術の開発などに重要である。導電材として、導電率の高い銅を主成分とする合金(銅合金)が従来から多数開発されてきたが、導電率と強度の両立については必ずしも満足なものが得られていない。
 本新技術は、銅に適量の銀を配合して溶解し、銅を主成分とする相と共晶相(銀を主成分とする相と銅を主成分とする相が混在する相)からなる複合組織の合金を鋳造して、これに適切な熱処理と伸ばすなどの加工を交互に施すことにより、強度の高い導電材用合金を製造するものである。本新技術は、(1)熱処理工程において合金組織の素地をなす銅から銀が析出し、全体として銅の純度が上がって銅本来の導電率が回復する効果、(2)加工工程を経て複合組織が微細化し、変形の妨げとなる加工歪みが集積して材料強度が増す効果、(3)熱処理と加工を組み合わせると、これらの効果が促進される、などの本研究者らが見出した銅銀系の性質を利用している。
 本新技術による銅合金は、高強度と良好な導電性の両性質を合わせ持つことに加えてリサイクルが容易であるなどの特徴を有することから、強磁場発生用の導体、エレクトロニクス用部品、高速電気鉄道の架空線などへの利用が期待される。
 本新技術の開発は、昭和電線電 株式会社(社長 村田 薫、 本社 東京都港区虎ノ門一丁目1番18号、資本金18,703百万円、電話044-344-1116(川崎事業所))に委託する予定で、開発期間は3年、委託開発費は2億円の予定である。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「導電材用高強度銅合金の製造技術」(背景・内容・効果)

(*)  この発表についての問い合わせは、電話048(226)5616 本田、天野までご連絡下さい。


This page updated on May 14, 1999

Copyright© 1999 JapanScienceandTechnologyCorporation.

www-pr@jst.go.jp