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別紙3

平成25年度 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

環境・エネルギー分野 研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

研究課題名 微生物学と水文水質学を融合させたネパールカトマンズの水安全性を確保する技術の開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
風間 ふたば
(山梨大学 大学院医学工学総合研究部付属 国際流域環境研究センター 教授)
相手国名ネパール連邦民主共和国 主要相手国
研究機関
トリブバン大学
研究課題の概要

本研究では、エネルギーと水資源に制約があるネパールのカトマンズ周辺地域を研究対象とし、人口増加や災害に耐えうる安心・安全な水の安定供給を低コストで達成するための方法論の確立を目的とする。具体的には、水量・水質・微生物という3つの視点の融合的な研究アプローチにより、水処理装置の最適な配置や処理規模を決定するための水安全性診断技術を開発するとともに、生物膜、人工湿地、土壌・砂ろ過などの従来の処理技術の処理速度や機能を改良し、地域の地下水や河川水を水源とする自立・分散・小規模な水処理システムの構築を目指す。また、この過程で、多くの関係機関や市民が水安全性確保に関する情報を共有することにより、地域住民による持続的な水資源保全と水処理システムの構築を支援する。

研究課題名 “フィールドミュージアム”構想によるアマゾンの生物多様性保全 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
幸島 司郎
(京都大学 野生動物研究センター 教授)
相手国名ブラジル連邦共和国 主要相手国
研究機関
国立アマゾン研究所
研究課題の概要

アマゾンのマナウス近郊では、急速な都市拡大によって世界で最も生物多様性の高い貴重な生態系が脅かされている。この地域の生態系を保全し地域社会の持続的発展をはかるために、日本の先端観測技術を駆使した共同研究によってアマゾンの代表的生物と生態系の科学的解明を進め、その保全法を確立するとともに、研究・保全・環境教育に不可欠なばかりでなく、エコツーリズムなどを通じて地域経済にも貢献できる自然観察研究施設と保護区のネットワーク「フィールドミュージアム・ネットワーク」を整備する。あわせて、最新の科学的知見と地域文化の理解にもとづいた環境教育とエコツーリズムのプログラム開発、自立的運営と活用のための組織整備を行う。

研究課題名 低品位炭とバイオマスのタイ国におけるクリーンで効率的な利用法を目指した溶剤改質法の開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
三浦 孝一
(京都大学 エネルギー理工学研究所 特任教授)
相手国名タイ王国 主要相手国
研究機関
モンクット王工科大学 エネルギー・環境連合大学院
研究課題の概要

タイでは、エネルギー安定供給と地球環境対策の観点から、自国で産出する低品位の褐炭とインドネシアなどから輸入する低品位の石炭のクリーンで効率的な利用法の開発と、大量に産出するバイオマス廃棄物の効率的な利用技術の開発が急務の課題となっている。本研究では、「溶剤改質法」という新たな技術によって、低品位炭、バイオマス廃棄物を原料に依存しない低分子量成分に高収率で変換し、それを新規バイオ燃料、固体燃料、化学原料源、ならびに炭素材料源としてクリーンにかつ効率的に利用する技術の開発とタイでの実用化を目指す。さらに、その成果をアジア諸国に普及して、地球規模のエネルギー・環境問題の解決に貢献する。

環境・エネルギー分野 研究領域「低炭素社会の実現に向けたエネルギーシステムに関する研究」

研究課題名 インドネシアにおけるバイオマス廃棄物の流動接触分解ガス化・液体燃料生産モデルシステムの開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
野田 玲治
(群馬大学 理工学研究院 准教授)
相手国名インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
インドネシア技術応用評価庁
研究課題の概要

エネルギー需要が増大する一方で、石油資源の枯渇が懸念されるインドネシアでは、エネルギー源の多様化と、新・再生可能エネルギーの開発が急務である。特にバイオマス廃棄物の発生量は大きいが、現地の条件に適した技術がなく、利用が進んでいない。本研究では、安価な粘土触媒を用いた流動接触分解ガス化により、アブラヤシ廃棄物などを効率的にガス化し、得られたガスから液体燃料を合成するプロセスを、準商業レベルの規模まで開発する。開発するプロセスは、現地で製造や改善が可能で、格段に安価であり、高度な制御がいらないものとする。また、開発した技術が普及していく基盤となる、人材の育成やネットワーク形成を行う。

生物資源分野 研究領域「生物資源の持続可能な生産・利用に資する研究」

研究課題名 遺伝的改良と先端フィールド管理技術の活用によるラテンアメリカ型省資源稲作の開発と定着 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
岡田 謙介
(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授)
相手国名コロンビア共和国 主要相手国
研究機関
国際熱帯農業センター
研究課題の概要

コロンビアをはじめとする熱帯ラテンアメリカの国々ではコメが不足している。また水と肥料の管理が粗放的なため、環境とコストの点から投入資源を節約しつつ収量を上げる技術が求められている。そこで、(1)深根性などの新規遺伝子をコロンビアの稲品種に導入して水と養分を効率的に集める新品種を作る、(2)水と作物・施肥の最適管理技術を開発してインターネット上の意思決定支援システムとして農家に提供する、(3)リアルタイム土壌センシング技術を核とした精密農業を開発してパイロット圃場での研修を通して普及する。人材育成も含めたこれらの取り組みによって「ラテンアメリカ型省資源稲作技術」を確立し、周辺国への波及も目指す。

防災分野 研究領域 「開発途上国のニーズを踏まえた防災科学技術」

研究課題名 火山噴出物の放出に伴う災害の軽減に関する総合的研究 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
井口 正人
(京都大学 防災研究所 火山活動研究センター 教授)
相手国名インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
エネルギー鉱物資源省 地質学院 火山地質災害軽減センター
研究課題の概要

127の活火山があるインドネシアは、国土が火山噴出物とその侵食による土砂で覆われており、火山噴火による火砕流や土石流、斜面崩壊などが同時に起こる複合的な土砂災害の危険性が高い。そこで、火山観測データから見積もられる火山灰などの噴出速度と気象や河川流域観測データに基づいて、複雑な土砂の移動を統合的にシミュレーションする技術を開発する。また、航空機の安全運航のために大気中の火山灰密度を評価・予測する。これらの技術を統合した災害対策のための支援システムを構築し、既存の警戒避難システムや土砂災害対策システムへ地理情報システムを介して情報提供する技術を開発する。

研究課題名 バングラデシュ国における高潮・洪水被害の防止軽減技術の研究開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
中川 一
(京都大学 防災研究所 流域災害研究センター 教授)
相手国名バングラデシュ人民共和国 主要相手国
研究機関
バングラデシュ工科大学 水・洪水管理研究所
研究課題の概要

バングラデシュは古来より洪水やサイクロンに悩まされてきたが、近年では地球温暖化による海面上昇の影響も加わり被害がさらに増大する危険に直面している。そのため、日本・バングラデシュ両国の研究者や行政などが、早急に一致団結してこの課題に取り組むことが強く望まれている。本研究では、海面上昇の影響を考慮した高潮・洪水ハザードマップ、河道安定化、避難システム、汚染物質などの氾濫・堆積などによる生活環境の悪化とその対策について検討する。一方、人材育成面では、中央・地方政府、NGO、地域コミュニティなどを対象としたワークショップや研修での地域住民と専門家との協議を通して、有効で持続的な災害対策を開発する。

感染症分野 研究領域 「開発途上国のニーズを踏まえた感染症対策研究」

研究課題名 ラオス国のマラリア及び重要寄生虫症の流行拡散制御に向けた遺伝疫学による革新的技術開発研究 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
狩野 繁之
(独立行政法人 国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部 部長)
相手国名ラオス人民民主共和国 主要相手国
研究機関
ラオス国立パスツール研究所
研究課題の概要

本研究では「ラオス国立パスツール研究所」および「ラオス保健省マラリア学・寄生虫学・昆虫学センター」との共同研究を通じて、同国の保健衛生上極めて重要な寄生虫疾患であるマラリア、メコン住血吸虫症、タイ肝吸虫症の分子遺伝学的解析を行い、その科学的知見に基づく流行拡散制御と疾病の制圧を目指す。また、ラオス若手研究者の人材育成を行い、同国の自立的、持続的な科学水準の向上と感染制御能力の向上に貢献する。これらの目的達成のため、遺伝子診断の新技術を開発し、病原体と媒介生物の集団遺伝的変化のモニタリング、さらには薬剤耐性マラリアの原因遺伝子の探索を行い、効果的な疾病制圧法と再流行の監視体制を構築する。

研究課題名 南部アフリカにおける気候予測モデルをもとにした感染症流行の早期警戒システムの構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
皆川 昇
(長崎大学 熱帯医学研究所 教授)
相手国名南アフリカ共和国 主要相手国
研究機関
気候地球システム科学応用センター
研究課題の概要

開発途上国の感染症問題は近年の著しい気候変動によりその脅威を増しつつある。例えば、エルニーニョなどにともなう洪水により、マラリアやコレラの流行がアフリカで頻繁に発生している。しかし、事前に大雨を予測できれば、感染症流行に備えて薬を蓄えるなどの対策をとることができるようになる。本プロジェクトでは、日本が開発した世界最高レベルの気候変動予測モデルをもとに南部アフリカの気候を予測し、その結果をもとに感染症流行を予測するモデルを開発する。そして、流行予測の結果を医療機関等の現場に配信する感染症早期警戒システムの構築を目指す。

境界領域(研究分野・領域が複数にまたがる提案課題)

研究課題名 モンゴルにおける家畜原虫病の疫学調査と社会実装可能な診断法の開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
井上 昇
(帯広畜産大学 原虫病研究センター 教授)
相手国名モンゴル国 主要相手国
研究機関
モンゴル国立農業大学 獣医学研究所
研究課題の概要

多くの家畜原虫病は持続感染して貧血や流産を引き起こし、慢性的に家畜の健康状態を悪化させる。本課題では、これまでに我々が確立してきたトリパノソーマ病とピロプラズマ病の診断法および媒介ダニの分類技術を用いて大規模な疫学調査を実施し、その分布と被害の実態を明らかにする。さらに、モンゴル野生原虫株由来遺伝子や蛋白質試料を用いたイムノクロマトグラフィー法による簡易迅速診断試法を開発して社会実装し、普及する。共同研究を通じて日本人とモンゴル人の若手専門家を育成し、成果に継続性と発展性を与え、原虫病早期発見体制を整備することで、同国および世界の家畜原虫病対策と畜産振興に貢献する。

採択後は感染症分野に分類し、課題の推進を行う。