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別紙1

海外における最近の取り組み

近年、科学技術と社会との関係が一段と深化し、科学と政治・行政との関係も高度化・複雑化してきました。政策形成の過程において科学が果たすべき役割は世界的に拡大傾向にあります。こうした流れに関連した動きが各国で見られます。

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図1 BIS「政府への科学的助言に関する原則」のポイント

(1) 英国では、1990年代の牛海綿状脳症(BSE)問題への政府および科学者コミュニティーの対応の失敗をきっかけに、1997年には政府機関が科学的助言を入手し活用する際の指針が定められました(その後3次にわたり改定)。また、各種審議会が政府に科学的助言を行う際の指針も2001年に定められました(その後2次にわたり改定)。さらに2010年3月24日にはビジネス・イノベーション・技能省(BIS)が「政府への科学的助言に関する原則」を定め、政府と科学的助言者との関係に係る理念的規範を示しました。(図1参照)

(2) 米国では、政府側と科学者コミュニティー側の双方で、1990年代ないしそれ以前より政策形成における科学のあり方に関する議論が行われ、そうした議論の結果が精緻にルール化されてきました。特にオバマ政権ではそうした動きが加速しています。オバマ大統領は就任後間もなくの2009年3月9日、科学の健全性の確保に関する基本方針を示しました。ホルドレン大統領補佐官は2010年12月17日、より詳細な指針を示し、それを受けて政府の各関連機関は独自の指針を本年3月までに策定しました。

(3) ほかの国でも検討が進められており、例えばドイツではベルリン・ブランデンブルク科学・人文科学アカデミーが2008年に科学的助言に関する指針を定めました。また欧州連合(EU)やインターアカデミーカウンシル(IAC)も指針を定めています。
IACは、国際機関に対して科学的助言を行う組織として2000年に設置され、世界各国のアカデミーにより構成されています。

特に最近では、政策形成の過程において科学が果たすべき役割に関し、国際的なレベルでの取り組みが急速に展開してきています。

(1) 本年5月、科学者の評価のあり方および科学の健全性に関する国際的な議論の促進を目的として、「メリットレビュー・サミット(Global Summit on Merit Review)」が全米科学財団(NSF)の主導により開催されました。この会議には、約50ヵ国のファンディング機関の代表者などが参加し、グローバル・リサーチ・カウンシル(GRC)の設立について合意されました。

(2) インターアカデミーカウンシルは、昨年末より「研究の公正及び科学の責任に関するプロジェクト」を進めてきています。このプロジェクトの中では、科学の責任に関する原則・指針を含む世界の科学者コミュニティー向けの教育用資料を早急に作成する予定になっています。