JST(理事長 中村 道治)は、タイ国家科学技術開発庁(NSTDA)注1)国家遺伝子工学バイオテクノロジーセンター(BIOTEC)注2)と共同で「バイオテクノロジー」に関する3件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注3)「日本-タイ研究交流」注4)の一環として行われるものです。
支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「持続的農作物生産に向けての次世代技術開発:ファージによる青枯病コントロール」
(研究代表者:広島大学 大学院先端物質科学研究科 山田 隆 教授、BIOTEC 農業バイオ研究ユニット オラワン・チャッチャワンカンパーニ 主任研究員)
本研究交流は、主要農作物の重大な病害である「青枯病」を化学農薬の代わりに細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージを用いてコントロールし、効率の良い「診断・予防・防除システム」を確立することを目指すものです。
(2)「DigiTag2法による結核菌の検出と型判別を目的としたDNAチップの開発」
(研究代表者:東京大学 大学院医学系研究科 徳永 勝士 教授、マヒドン大学 医学部付属シリラート病院 アンカナ・チャイプラセルト 准教授)
本研究交流は、結核菌群の検出と結核菌遺伝系統の同定を目的とした、簡便で自動化や大規模な測定(ハイスループット化)が可能な遺伝系統判定法を開発し、大量の臨床分離株に適用することによって、病原菌と宿主の相互作用の解明を目指すものです。
(3)「鉄含量の高いコメと鉄過剰耐性イネの開発を目指した遺伝子資源の同定」
(研究代表者:石川県立大学 生物資源工学研究所 西澤 直子 教授、BIOTEC イネ遺伝子発見ユニット ビニチャン・ルアンジャイコン 研究員)
本研究交流は、タイ側が保有するイネ遺伝資源の鉄栄養関連遺伝子群を解析し、それらを活用することによって、ヒトの貧血症を改善するための白米中の鉄含有量の高いイネ品種と鉄過剰耐性イネ品種の開発を目指すものです。
今回の研究交流課題の募集では15件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびタイ側の専門家により評価しました。その結果をもとにJSTおよびBIOTECが協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とタイがともに支援すべきとして合意した3件を支援課題として決定しました。日本側は平成24年8月に支援を開始し、研究期間は支援開始から3年間を予定しています。