JST(理事長 中村 道治)は、ドイツ研究振興協会(DFG)注1)およびドイツ連邦教育研究省(BMBF)注2)と共同で「計算論的神経科学」に関する6件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注3)「日本-ドイツ研究交流」注4)の一環として行われるものです。
支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「ミツバチ聴覚情報処理の神経基盤~振動応答性ニューロンに対する計算神経科学アプローチ~」
(研究代表者:福岡大学 理学部 藍 浩之 助教、ミュンヘン大学 ルードウィッヒ-マクシミリアン校 生物Ⅱ学部 トーマス・ワットラークラ 教授)
本研究交流は、ミツバチのダンス言語に関する脳内メカニズムおよびミツバチ社会における意義を解明し、動物のコミュニケーションの総合的理解を目指すものです。
(2)「非定常環境におけるロバスト適応BCI」
(研究代表者:京都大学 大学院情報学研究科 大羽 成征 講師、ベルリン工科大学 コンピュータサイエンス学部 クラウス・ロバート・ミューラー 教授)
本研究交流は、ユーザーの脳内状態を読み取ることでコンピュータを操作する装置であるブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)を非定常な環境へ適用させる技術基盤の開発を目指すものです。
(3)「アナリシス・バイ・シンセシスによるニューロンネットワークモデルの推定と自発性同期現象を生成する神経回路メカニズムの解明」
(研究代表者:兵庫医科大学 生理学生体機能部門 越久 仁敬 教授、ゲッティゲン大学 神経生理学部 スベン・ヒュールスマン 教授)
本研究交流は、呼吸神経回路の動作メカニズムに関する計算論的モデルを構築することを目指すものです。
(4)「能動的自然視条件での視覚情報処理におけるトップダウン的影響の効果:視覚経路における多領野大規模並列神経活動データ計測とその多角的解析」
(研究代表者:大阪大学 大学院生命機能研究科 田村 弘 准教授、ユーリッヒ総合研究機構 ソニア・グリュン グループリーダー)
本研究交流は、動物実験および統計解析によって、能動的視知覚の神経メカニズムを解明することを目指すものです。
(5)「大脳基底核の機能と病態の解明」
(研究代表者:自然科学研究機構 生理学研究所 生体システム研究部門 南部 篤 教授、ケムニッツ工科大学 コンピュータ科学科 フレッド・ハムカー 教授)
本研究交流は、パーキンソン病などの大脳基底核疾患に対する新たな治療法に向けて、大脳基底核の機能やその病態を解明することを目指すものです。
(6)「触覚学習および触覚フィードバックを用いた運動制御」
(研究代表者:株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報研究所 森本 淳 室長、ゲッチンゲン大学 ベルンシュタイン脳研究センター フロレンティン・ウォーガッター 教授)
本研究交流は、神経科学とロボティクスの知見から触覚情報を用いた人の巧みな物体操作および制御のメカニズムを明らかにすることを目指すものです。
今回の研究交流課題の募集では19件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびドイツ側の外部専門家により評価しました。その結果をもとにJST、DFGおよびBMBFが協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とドイツがともに支援すべきとして合意した6件を支援課題として決定しました。日本側、ドイツ側とも平成24年4月に支援を開始し、研究期間は支援開始から3年間を予定しています。