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参考1

平成23年度募集の概要

1.研究開発プログラムの概要

近年、地球温暖化やエネルギー、感染症、少子高齢化など、広範かつ複雑な社会的問題が顕在化しています。それらの問題解決に向けた取り組みにおいては、先端的な研究や技術開発の貢献が期待される一方、併せて、研究開発成果などの活用などを通じた新しい経済的、社会的・公共的な価値の創造により社会のシステムの変化を促すイノベーションの重要性が指摘されています。このため、問題解決に向けて効果的に研究開発を推進していくためには、科学技術政策に加えて、関連するイノベーション政策も幅広く含めた「科学技術イノベーション政策」を、産業政策や経済政策、教育政策、外交政策などの重要政策と密接に連携させつつ、戦略的に展開していくことが急務となっています。

限られた資源をより効率的に活用しつつ、戦略的に科学技術イノベーション政策を展開するためには、経済・社会などの状況、社会における課題とその解決に必要な科学技術の現状と可能性などを多面的な視点から把握、分析し、それらの客観的根拠(エビデンス)に基づき、合理的なプロセスにより政策を形成するとともに、政策形成過程の透明性を高め、国民への説明責任を果たしていくことが必要です。

一方で、科学技術イノベーション政策においては、所期の目標の達成に不確実性が伴うことや目標の達成までに長期的な取り組みが必要なことなどから、政府研究開発投資をはじめとした政策の経済や社会への影響を客観的・定量的に把握し、政策の効果を評価することには、かなりの困難が伴います。また、科学技術の進歩とイノベーションの進展の因果関係やそのプロセスにおける政策の効果や影響についても十分な理解が進んでいるとは言えません。

このような背景や問題意識のもと、文部科学省では「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(以下、「『政策のための科学』推進事業」という。)を立ち上げ、「政策課題対応型調査研究」、「公募型研究開発プログラム」、「基盤的研究・人材育成拠点の形成」、「データ・情報基盤の構築」を推進することとしました。

社会技術研究開発センターでは、上記の「公募型研究開発プログラム」として「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」(以下、「本プログラム」という。)を設置し、社会的問題の解決に資する科学技術イノベーション政策の形成に向け、客観的根拠に基づく合理的な政策形成プロセスを構築するための研究開発を推進します。

2.プログラムの目的

客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に中長期的に寄与することを目的とします。

上記の目的のために、研究開発プロジェクトを公募し、

3.研究開発カテゴリーの例示と取り組みの要素

(1)戦略的な政策形成フレームワークの設計と実装

科学技術イノベーション政策全体の戦略性を高めるための政策形成過程に関連する研究開発(フレームワーク・仕組みの設計、方法論の開発など)が含まれます。政策形成プロセスを進化させるためには、政策の概念化・構造化を行うとともに、社会的課題を抽出・設定し、戦略の立案、戦略の事前・事後評価、見直し、次期戦略形成への反映など、現実の政策形成過程においてPDCAサイクルを機能させる仕組みの設計とそのための方法論の開発が必要となります。

当該カテゴリーに関わる取り組みの目指すところとして、目指すべき国の姿(政策の大目標)の提示、科学技術イノベーション政策で取り組むべき重要課題の設定、実効性のある科学技術イノベーション政策の推進体制の構築などが挙げられます。

(2)研究開発投資の社会経済的影響の測定と可視化

政府の研究開発投資が社会・経済へ及ぼす影響を把握することを目的とする研究開発が含まれます。不確実性の高さや長期的視野の必要性から、科学技術イノベーション政策の効果・影響を評価することは非常に困難である一方、政府の科学技術イノベーションへの投資に対する説明責任がますます求められています。そのようなニーズに対応するため、科学技術とイノベーションの関係やそのプロセス、特に政策との関係を包括的に理解し、これまでとは異なる形でできるだけ定量的に経済・社会への影響を把握するための努力を続ける必要があります。

当該カテゴリーに関わる取り組みの目指すところとして、研究開発投資の目標の明確化、重要課題への対応と基礎研究の抜本的強化、政策のPDCAサイクルの実効性の確保などが挙げられます。

(3)科学技術イノベーションの推進システムの構築

科学技術イノベーション政策を推進するシステム(制度・体制など)のあり方と推進システムの科学技術イノベーション過程への影響の把握を目的とするものです。推進システムには、人的資源のマネジメント(人材の需給構造など)、研究インフラのマネジメント(施設・設備、研究資源、知財など)、研究組織・ネットワーク(産学連携など)、研究開発プロジェクトのマネジメントなど、上述の「研究開発投資の社会経済的影響の測定と可視化」における資金配分などの資金に関するマネジメント以外のものを全て対象として含みます。

当該カテゴリーに関わる取り組みの目指すところとして、科学技術人材の育成、科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革、国際水準の研究環境および基盤の形成などが挙げられます。

(4)政策形成における社会との対話の設計と実装

科学技術イノベーション政策に関連して、政策形成において社会の参画を促進するための仕組みの設計・方法論の開発と、実際の政策形成プロセスにおける活用を目的とするものです。科学技術が社会・経済に広く浸透している現在、社会との対話を通じた課題抽出、合意形成、政策効果の社会への説明などを適切に行うことが必要であり、そのための方法論の開発や試行にとどまらず、現実の政策形成における活用が喫緊の課題となっています。

当該カテゴリーに関わる取り組みの目指すところとして、科学技術イノベーション政策の企画立案および推進への国民参画や、科学技術に関連する倫理的・法的・社会的課題への対応、科学技術コミュニケーション活動の促進などが挙げられます。