JST(理事長 北澤 宏一)は、メキシコ国家科学技術審議会(CONACYT)注1)と共同で「バイオメディシン」に関する3件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注2)「日本-メキシコ研究交流」注3)の一環として行われるものです。
支援を決定した課題は次の通りです。
(1) 「脂肪酸受容体をターゲットとした糖尿病を防止するための薬剤開発:リガンド探索と制御メカニズムの解明」
(研究代表者:京都大学 大学院薬学研究科 辻本 豪三 教授、メキシコ国立自治大学 細胞生理学研究所 アドルフォ・ガルシアセインツ 教授)
本課題は、新たに日本で発見された脂肪酸受容体を標的とするメキシコの天然物を探索し、現在全世界的な健康問題である肥満や糖尿病の新たな治療薬の開発を目指す研究です。
(2) 「空間認知記憶に関わる大脳神経細胞の可視化と機能解析」
(研究代表者:東京大学 大学院医学系研究科 尾藤 晴彦 准教授、メキシコ国立自治大学 神経生物研究所 ビクター・ラミレス・アマヤ 助教授)
本課題は、日本・メキシコ双方の脳神経医学の専門家が学際的・分野横断的アプローチにより空間認知記憶形成の原理解明を追求し、認知症などの記憶障害の治療への手掛かりをつかむことを目指す研究です。
(3) 「内向き整流性K+チャネルへのバイオメディシン」
(研究代表者:関西医科大学 医学部 岡田 誠剛 講師、メキシコ国立自治大学 生物学研究所 ロリバル・ポサニ 教授)
本課題は、メキシコの生物多様性と日本の生理学の技術を生かして、心血管系や神経系で重要な役割を果たす内向き整流性K+(カリウムイオン)チャネルの遮断薬・開口薬を、サソリおよびクモ毒から見いだす研究です。
今回の研究交流課題の募集では13件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびメキシコ側の外部専門家により評価しました。JSTとCONACYTはその結果をもとに協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とメキシコがともに支援すべきと合意した3件を支援課題として決定しました。日本側、メキシコ側とも本年10月に支援を開始し、研究期間は支援開始から3年間を予定しています。