研究開発テーマ | 高齢社会を豊かにする科学・技術・システムの創成 |
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課題名 | PM※ | 開発リーダー | ||
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研究リーダー | ||||
1 | 高齢者の記憶と認知機能低下に対する生活支援ロボットシステムの開発 | 大中 慎一 | 日本電気 株式会社 | |
○ | 井上 剛伸 | 国立障害者リハビリテーションセンター | ||
2 | 高齢者の自立を支援し安全安心社会を実現する自動運転システム | ○ | 井上 秀雄 | トヨタ自動車 株式会社 |
永井 正夫 | 東京農工大学 | |||
3 | 高齢者社会参加統合サービスパッケージの構築 | 本田 幸夫 | パナソニック 株式会社 | |
○ | 大和 裕幸 | 東京大学 | ||
4 | 高齢者の経験・知識・技能を社会の推進力とするためのICT基盤「高齢者クラウド」の研究開発 | 小林 正朋 | 日本アイ・ビー・エム 株式会社 | |
○ | 廣瀬 通孝 | 東京大学 | ||
5 | 高齢者の社会参加を支援するための「高齢者の脳と心の健康増進支援システム」の研究開発 | ○ | 牧野 快彦 | 富士フイルム 株式会社 |
酒谷 薫 | 日本大学 | |||
6 | 認知・脳科学的手法に基づく元気高齢者の認知機能支援システムおよび技術者向け教育プログラムの開発 | 三樹 弘之 | 沖電気工業 株式会社 | |
○ | 中邑 賢龍 | 東京大学 | ||
7 | 高齢社会での社会参加支援のための軽労化技術の研究開発と評価システムの構築 | 山岸 孝幸 | 三菱電機エンジニアリング 株式会社 | |
○ | 田中 孝之 | 北海道大学 | ||
8 | 成長する個人差対応高齢者見守りロボットシステム | 今野 昌則 | 富士ソフト 株式会社 | |
○ | 久保田 直行 | 首都大学東京 |
※PM(プロジェクトマネージャー):課題の取りまとめ役
<プログラムオフィサー(PO)総評>
日本が世界に先駆けて超高齢社会に急速に向かっているなかで、労働者人口の減少、社会保障費の増加に加え、高齢者に社会参画を可能な限り延長することが緊急の課題となっています。
そこで、本研究開発テーマでは、高齢社会における「就業等の支援」と個人の「活動の支援」の両方を実現することを目標としました。研究開発の対象としては、「高齢化に伴って低下する心身機能を可能な限り維持させ、高齢者の獲得した知識・経験をできるだけ生かす支援機器やサービスシステム」としました。また、高齢化は日本ばかりでなく世界的な傾向にあることから、本テーマにより創成される新しい技術・システムが将来、輸出産業などにも生かされることを期待しています。
実用的な技術の創出とそれによる新産業の創出を念頭に置き、対象課題を、(A)日常生活を送る上で重要な「感覚」、「脳」、「運動」の機能低下を支援する課題、(B)社会参画する上で重要な「情報獲得」、「コミュニケーション」、「移動」を円滑にする支援技術を課題としました。また、これらの課題を遂行するにあたって、インターネットに代表されるICT(情報通信技術)やロボットに代表されるIRT(情報ロボット技術)を生かすことを前提条件としました。これらの条件を基に、図に示した、「ウェアラブルICT」、「インフラICT」、「労働支援IRT」、「移動支援IRT」、「脳機能支援ICT・IRT」からなる5つの技術を研究開発対象として公募を行うこととしました。

研究開発対象の5つの技術分野
ただし、今回の公募では、本格的な研究を目指すための絞り込み研究(企画調査研究)課題を採択し、その研究を約1年間にわたり実施し、その結果を本テーマの設定趣旨に沿って評価することにより、本採択課題を決定することとしました。
このような趣旨で公募を行ったところ、54件の応募がありました。応募課題全般にわたって、技術開発が中心となり、高齢者の特性やニーズを踏まえた提案が少なかったように思われました。本研究開発テーマのプログラムオフィサーと、3名のプログラムオフィサー補佐ならびに7名のアドバイザーにより、①研究開発を進める「戦略」、②期待される「社会的インパクト」、および③乗り越えるべき「壁」とそれを超える「方法」が示されているか、という観点から審査を行い、18件を面接審査対象課題として絞り込みました。
面接審査会では上記の審査観点に加え、(a)高齢者の身体機能や生活機能をICTやIRTで支援し、活用するという立場に立っているか、(b)成果物の評価を実施する予定の「フィールド」を明確にしているか、(c)医療に関わる課題の場合、薬事法などに抵触しない(例:非侵襲的な支援)ように考慮されているかなどを基準として審査を行い、企画調査研究課題として8件の提案を採択しました。
ただし、採択課題は結果的に移動・労働の支援技術とネットワークを使った支援システムが多くを占めました。高齢者自身が身に付けて弱った機能を支援し就労を助ける技術については、今後、何らかの形で本テーマに導入すべきであると考えます。
平成23年1月7日 伊福部 達