本新技術の背景、内容、効果は次のとおりです。
半導体や液晶などの電子部品を製造する工程において、酸混合物を用いたエッチング処理が用いられています。例えば、シリコンウエハー製造工程においては、シリコン単結晶からウエハーを切断、機械研磨したときに生ずる表面の加工変質層を除去するためには化学エッチングが行われます。ここでは主に酢酸―硝酸―フッ酸からなる酸混合物が用いられ、多量の混酸廃液が生じています。 現在、この混酸廃液を処理するためにはアルカリによる中和が行われていますが、中和処理だけでは、BOD、COD成分が高く排水基準に適合しない場合が多く、中和処理、塩廃棄、廃水処理など環境対策に大きな費用が掛かっています。この問題の解決のために、廃酸を個別に分離回収して再利用を可能にする技術が望まれています。
本新技術は、溶媒抽出法を用いて混酸廃液から組成の各酸を個別に分離回収することにより、廃液の中和処理を不要として、費用と環境負荷を低減するものであります。混酸廃液から酸を回収する操作は以下の通りであります。
実際の操作には、ミキサー・セトラー(図1)を向流方向に多段に配置して行います。ミキサー・セトラーについては、ラボ規模の26段試験装置や実物大の2段モデルを用いた実験により、その翼車と槽の形状が最適化されています。処理量50トン/月の40段実証プラント(図2,図3)の連続運転試験により、高純度・高収率の分離回収が実証されました。例えば、酢酸回収率97%以上、純度99%以上の性能が測定されました。 ラボ規模から実証プラントまでの実験により、容量比で100倍までのスケールアップが実証されており、さまざまな処理量の連続プラントの設計技術を確立することができました。
本新技術により、シリコンウエハーの表面処理工程で生じるエッチング廃液(酢酸、硝酸、フッ酸)から個別の酸を分離回収することができ、従来からの廃酸の中和処理の工程が不要となり、中和処理、塩廃棄、廃水処理など環境対策の大きな費用が節減できます。工場のゼロエミッション化につながります。 また、この技術は液晶製造工程で使われる酸エッチングの廃液処理(酢酸、硝酸、リン酸)や各種電子部品工場の廃液処理にも、広く応用が期待されます。 | ||||||||||||
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