1 ) |
モデル化の概要および成果 |
本モデル化は、生体から抽出された遺伝子(DNA)を直線状に多数整列させた基板を用い、その基板に放射線や化学物質等を作用させたときの変異(2重鎖切断、単鎖切断等)を、エバネッセント光を利用した蛍光顕微鏡により、遺伝子(DNA)を高感度で可視化し、その変異を定量して解析するシステムの自動化を目指したものである。
従来、(1)DNAを特定位置に整然と配列させることが難しく、(2)観察対象としたDNA以外からの蛍光の妨害により高感度なDNAの観察が困難であったこと等を踏まえ、本システムでは、金属(Al)を蒸着させたガラス基板に電気的にDNAを特定位置に線状化して整然と多数配列させることのできる方法(静電伸張法による遺伝子固定基板)を採用し、また、Arレーザーを光源とし、そのレーザーをガラス基板に照射させる際に全反射させることで、光入射面の反対側に僅かに滲み出す光(エバネッセント光)によりできるだけDNAだけを発光させる方法を採用した。
本システムではエバネッセント光によるDNA観察のノイズ(観察対象以外の蛍光)対策の有効性が確認された。一方、遺伝子固定基板については、DNAを特定位置に伸張固定することは可能となったが、品質良く、一本一本整然とした多数配列は、今後の課題となった。このような遺伝子固定基板により、遺伝子への放射線や化学物質等の作用を高感度で検出することが可能になり、エバネッセント光による遺伝子の変異原感受性試験の有効性が確認できた。
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2 ) |
事後評価 |
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モデル化目標の達成度
エバネッセント光を利用して個人の遺伝的環境リスクを評価するシステムの開発というコンセプトに対しては、実施した手法では未解決であり、目標は未達成である。 |
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知的財産権等の発生
現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。 |
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企業化開発の可能性
目標とする装置の試作には、光学的検出部分と装置の製作技術についての再検討を行う必要があり、企業化にはかなりの時間を要する。 |
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新産業、新事業創出の期待度
目標とした装置が開発されれば、医療、健康分野に需要を生ずると考えられ、新産業となる可能性がある。 |
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3 ) |
評価のまとめ |
特定遺伝子のリスク評価装置の開発という目標からいうと、検出技術面、必要なパーツ、システム等について更に検討を加える必要があり、目標達成にはまだ距離がある。技術目標の再確認が必要であり、技術面でも製造面でも試験を継続して、今後の見通しを立てることが必要である。
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