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モデル化の概要および成果 |
本技術は採血のみの簡便な臨床診断法であるため、危険度の高い転移癌の早期発見と癌治療法の選択を容易に実施できる新技術として注目される。
転移癌治療の臨床診断予測は手術時の肉眼所見ならびに採取試料の病理所見に頼っている。また、間接的に血液中の腫瘍マーカーによる補助的な診断がなされているにすぎない。
悪性度の高い癌に高頻度で発現するアミノ酸トランスポーターLAT1と正常細胞に発現するアミノ酸トランスポーターLAT2を検出するイムノアッセイ法を確立した。血液を用いて免疫化学的に比較判別することにより、手術を行うことなく転移癌の診断を評価する臨床診断法の開発を試みた。即ち、ヒト膀胱癌由来の培養細胞T24を用いてLAT1の m-RNAの高発現を証明することによりT24細胞が癌細胞モデルとして有用であることを確認した。3種類のin vitroモデルを構築してLAT1 m-RNAの測定限界を検討した。一方、LAT1の抗体を用いてヒトの手術標本を免疫組織化学的に検討した結果、LAT1が従来の癌マーカー以上に癌細胞に特異性を持つ事が判明した。更に、LAT1の抗体を用いるELISA法(ルミノメーター測定)によりLAT1ペプチドを1 fg/ mL~1 pg/ mLの高感度で定量可能な測定システムを確立した(ELISA法により0.8個相当のT24細胞を検出できた)。
本測定方法は臨床検査の一環として、また新しい転移癌診断法として確立され保健医療上の経済的な効果は大きい。また本法は癌増殖に必須なアミノ酸の癌細胞内への取り込みプロセスを利用しており、転移癌の診断が正確・迅速かつ安価で行える社会的な効果も大きいため、癌患者の福祉増進に大きく寄与する。この系は危険度の高い転移癌の臨床診断予測が可能であるため癌治療成績の見極めと癌治療法の選択に大きく貢献する。
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2 ) |
事後評価 |
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モデル化目標の達成度
悪性のガン細胞膜に特異的に発現するアミノ酸トランスポーターLAT1タンパク質の知見をシーズとして、免疫吸着測定法(ELISA)による高度検出法を確立したが、最終目標の血液による転移ガン診断マーカー開発の達成には至らなかった。未だ基礎的段階での検討にかなり力を注がざるを得なかった。 |
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知的財産権等の発生
特許出願なし。今後実用化の研究が進めば、出願の可能性有り。 |
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企業化開発の可能性
本モデル化研究の過程でLAT1には従来のガンマーカー以上の特異性が確認されたので、転移ガン診断マーカー開発による企業化が期待される。ただし、まだ見通しを立て得る段階ではない。 |
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新産業、新事業創出の期待度
実際のヒト血液での高感度測定法の確立が急務であり、それによる臨床研究が進めば新事業創出が期待でき、社会的意義もある。 |
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3 ) |
評価のまとめ |
技術的には未だ基礎的レベルでの検討が行われている段階と考えられる。企業化については、研究データの蓄積と共に市場でのコンセンサスを必要とするものであり、実現までの努力が必要である。
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