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モデル化の概要および成果 |
従来の太陽電池はシリコンを主原料、板材を基板にしたものが多いが、シリコンと同等の半導体特性および共有結合を主体とした構造を有するものに炭素材料がある。そこで、工具や金型などでその耐摩擦摩耗特性を飛躍的に向上させ、原料コストも安価であるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜を主原料とした「連続式DLC太陽電池薄膜製造装置」の試作を行った。現在のDLC薄膜の成膜工程はバッチ処理方式で、真空容器の頻繁な開閉を要するため生産効率が悪い。そこで、大量生産を図るために基板としてフレキシブル基板を採用しかつ連続成膜処理を行うための巻取り式機構と2室構造を有した成膜装置の開発を行った。これにより原料ガスとドーピングガスを導入し太陽電池用薄膜としてDLC-PN層成膜を行うことが出来た。従来のシリコン系太陽電池に比べ、DLC薄膜は柔軟性、耐摩耗性(耐食性)、耐熱性で優れることから、僻地等の過酷な環境下で使用できる。応用用途としてガラス張ビルディングや自動車ガラスの遮光シート、簡易に取付可能な家屋の屋根用太陽光発電シート、レジャーシート等に利用されることで産業の生産性向上、生活の利便性向上への貢献を目指す。今後、従来のシリコン系の太陽電池からカーボンを利用した太陽電池に切り替わっていくことから、環境に適合した安価な太陽電池として市場に展開していきたい。
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2 ) |
事後評価 |
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モデル化目標の達成度
連続式DLC太陽電池薄膜製造装置は当初の目標性能を超えて達成でき、連続加工の目処がついた。 |
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知的財産権等の発生
装置の試作と使用データによって、装置及び加工技術及び新商品展開に関する出願が期待出来る。 |
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企業化開発の可能性
課題の太陽電池は耐久性に優れるとのことであるが、品質、コストを含めた多くの点で競合する多くの製品と競争していけるかどうかは、モジュール化による評価データ及び市場の評価による。企業は実用化の大型生産機に移行して商品化を計りたい意向。DLC技術は実用化されており、連続式製造機が実現すればシリコン製品より安価にできる可能性がある。 |
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新産業、新事業創出の期待度
太陽電池基盤がモジュール化されて、商品力のあるものが出来れば、新事業創出の可能性はある。新市場として、ビル窓、自動車ガラス遮蔽シート等の応用製品は有望であり、波及効果も大きい。 |
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3 ) |
評価のまとめ |
太陽電池用DLC連続加工装置を完成し、従来のシリコンに替わるフレキシブルタイプの発電シート連続生産の目処がついた。これによる基盤試作を基に、実用化に向けモジュールを開発し、他社と競争出来る商品の開発に結びつけることが今後の課題である。大幅なコストダウンと高耐久性に加え、省エネルギー(CO2削減)、環境安全への貢献が予想され、新事業化の期待が持てる。
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