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モデル化の概要および成果 |
本研究は水溶性金属化合物を用いて基板上に薄膜を形成し、セラミック化することにより強誘電体不揮発性メモリを作製するものである。
工業界で一般的な有機溶媒を用いたセラミック膜・コーティング液は塗布・乾燥時に大量にVOC(揮発性有機化合物)を放出するため、大きな社会問題になっている。すでに平成12年度本事業においてエレクトロニクスや触媒の原料であり、かつ水溶化が困難とされるチタンを錯体化する事によって有機溶媒系から水系への転換を可能にする水溶性チタン化合物を連続的に製造する技術を確立している。この水溶性チタン化合物と同様に作製した他種の水溶性金属化合物を原料として水をプロセス溶媒に用いることにより、低環境負荷でのセラミック粉体及び薄膜作製法を開発した。
ウェーハ薄膜形成装置のスピンコータにより薄膜、乾燥を数度繰り返し所定の膜厚を確保後、焼成をおこなう。この時の熱処理条件は比較的低温の条件であり溶液法の利点でもある低温合成に関しても一定の成果と可能性を示せたと言える。X線回折測定、ラマン分光により、形成された膜がBi4Ti3O12の単相であることを確認し、走査電子顕微鏡での観察により、膜の厚さも計測できた。
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2 ) |
事後評価 |
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モデル化目標の達成度
水溶性金属化合物からセラミックの粉体及び薄膜を合成する目標は達成したが、薄膜の緻密さなどに問題があり、期待性能は得られなかった。 |
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知的財産権等の発生
可能性はある。 |
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企業化開発の可能性
基本的な膜の緻密さ、膜厚の確保に課題のウエイトが大きく、現段階では企業化は見えにくい。開発の続行には実施体制の見直しが必要である。 |
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新産業、新事業創出の期待度
不揮発メモリ材料としての期待はあるが、解決すべき基本的課題を残しており、現状では新産業、新事業創出の可能性を判断する段階にはない。 |
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3 ) |
評価のまとめ |
実験は計画通り進行し、粉体及び薄膜を合成することができたことは初年度の実績としては評価できる。企業化には、膜の品質向上の課題が大きく、ハードルは高い。環境問題への貢献が期待される課題であり、今回用意した試作機を用いて実験を進め、有用な情報の提供がなされるよう、実施体制の整備と、一層の研究努力が望まれる。
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