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研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)

平成12年度採択課題事後評価報告書


平成16年3月
研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)評価委員会


4. 研究開発課題の個別評価
(9)放電式金属噴射プリンター
リーダー :山口 勝美(名古屋大学 名誉教授)
サブリーダー :洪  秀明

1 )) 研究開発の概要
 金やニッケル等の高融点金属については金属細線を放電で瞬間的に溶融して微小ドットとして発射させることにより、はんだ等の低融点金属については通常の電熱体で加熱溶融させたものをドット噴射させる方式を用いることにより、基板上に線、図形等を描き、二次元的な配線、バンプ等を形成させることを可能とする装置の研究開発を行う。比較的広範な金属を用いる事が可能な点で優れており、工業分野への広い応用が期待される。

2 )) 事後評価内容
A)成果
 金、ニッケル等の高融点金属は、放電を使って細線を局部溶解すると同時にジェットで吹き飛ばす事でドットの発射を実現したが、射出精度に課題が残った。低融点金属については鉛フリーはんだをターゲットとして開発を進め、発射速度、径のばらつき、射出精度ともにほぼ目標を実現できた。技術的に実現可能な事業として、鉛フリーはんだのBGAボールの製造、金属印字・描画等のプリント事業、バンプ製造の共同開発、などが考えられる。これらの成果をもとに、メジェップ株式会社を設立した。
特許出願数:2件(研究開発終了時点)
B)評価
計画の達成度 :高融点金属噴射用の放電式ノズルは、噴射精度等、今後に課題を残した。はんだ等の低融点金属の溶融噴射用ノズルは、開発目標を達成できた。
知的財産権 :噴射装置、噴射方法等、必要な特許は出願されている。
起業化計画 :市場を分析した上で特定のターゲットに絞った現実的な計画である。但し、はんだボール事業はコスト競争時代に入っている状況を考えると、設立企業の事業を継続させるには、新たな技術の応用、研究、ユーザ捜しが課題である。
新産業創出 :微細配線技術が確立すれば小型化が進むモバイル機器等への利用等、新市場を創出する可能性を持つ。
総合・その他 :高融点金属噴射装置の開発は道半ばであるが、電子機器の配線等において画期的な技術を生む可能性を秘めている。その研究開発の継続のためにも、収益源の確保、資金計画の強化が課題である。


(10)立体内部カラーマーキング技術
リーダー :中山 信一(山梨県工業技術センター 主幹研究員)
サブリーダー :磯野 光将

1 )) 研究開発の概要
 プラスチック等の透明な素材の内部に、多様な色彩で文字やイラストなどを三次元的に形成するマーキング技術の研究開発を行う。本技術は、素材内部に立体的なカラーマーキングを行うため、従来の印刷や彫刻等の製品表面への加工に比べ耐摩耗性、作業環境等に優れ、かつ原材料の再利用に有利である。リサイクルが可能な印刷加工技術として利用が期待される。

2 )) 事後評価内容
A)成果
 熱可塑性発色素材としては、YAG及びYVO4レーザの基本波或いは第三高調波で黄色に発色する半透明黒色母材、赤色に発色する半透明紫色母材および透明素材に無彩色ではあるがより繊細な加工が可能な数種類の素材を開発した。装置としては、熱発色および光化学反応を想定したYAG及びYVO4の基本波と第三高調波の2種類のレーザ装置の開発を行った。現状のレベルの素材サンプルでメーカー3社の調査を行ったところ、視認性、コントラスト等でユーザの満足に足る結果とならなかった。また、各種発色素材は、多色性、立体感、コントラスト等において、現行の印刷技術の水準に達しておらず、立体内部に3色をマーキングする当初の技術目標にも到達していない。
特許出願数:2件(研究開発終了時点)
B)評価
計画の達成度 :達成度は低い。起業化に目途が付けられるレベル(透明材料内部に有彩色をマーキングする基本的技術)までの開発には至らなかった。
知的財産権 :本法の着想はともかく、現時点ではまだ満足できる結果が得られていないため、今後も研究開発を継続し起業につながる成果を出すことにより、出願特許の価値を高めていく必要がある。
起業化計画 :事業としての狙いと発想はよいが、技術的に完成しておらず起業化は未知数である。表面へのマーキングを行っている現技術との差別化がビジネスとしてはまず必要である。
新産業創出 :本マーキング技術が完成すれば、応用面は広く、現在でも新産業創出の期待度は大きい。
総合・その他 :当初設定した技術目標のハードルが高かったため、3年間という短い開発期間では期待していた成果は得られなかった。今後はリーダーの所属する機関にて関連する研究開発を継続するが、その中で起業につながる成果が生まれることを期待する。

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