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研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)

平成12年度採択課題事後評価報告書


平成16年3月
研究成果最適移転事業成果育成プログラムC(プレベンチャー)評価委員会


4. 研究開発課題の個別評価
(5)低侵襲心臓手術用カテーテル
リーダー :粂野 孝志
サブリーダー :四津 良平(慶応義塾大学医学部 教授)

1 )) 研究開発の概要
 心臓内部の手術の際に不可欠な大動脈の血流遮断を行うバルーンカテーテル医療用具の研究開発である。高耐久性バルーンと細くしなやかで有りながら適度な剛性を有するカテーテルからなり、小さな切開創での心臓手術を可能とする。患者の早期社会復帰や生活の質の向上が望め、在院日数の短縮から医療経済への貢献が期待される。

2 )) 事後評価内容
A)成果
 血流遮断を維持する高耐久性バルーンと、数センチという開胸創のわずかな隙間からでもバルーンを大動脈内へ挿入・安定留置できるカテーテルシャフトから構成される、低侵襲心臓手術用バルーンカテーテルを開発し、その製造技術を確立した。本バルーンカテーテルは、心筋保護液の注入等の多機能性も備えている。本カテーテルの有用性と安全性を動物実験などから確認し、臨床評価において早期退院(最短で術後4日)・傷跡5cm・高い患者満足度という結果を得た。また、本カテーテルの使い勝手を向上させるための周辺医療用具を開発し、臨床使用可能な試作品を得た。これらの成果をもとに、有限会社エンドテックを設立した。
特許出願数:2件(研究開発終了時点)
B)評価
計画の達成度 :カテーテルの開発において数値目標を達成し、製品形態にまで完成させることができた。研究開発計画は概ね達成された。
知的財産権 :出願中のものもあるが、製品及び製法に関しては一定のレベルを確保できていると評価できる。今後は、ベンチャー存続という視点からの特許戦略が必要。
起業化計画 :医療器具の事業化において上市までのリードタイムも十分考慮されており、その期間に他製品開発が計画されるなど、良く考えられた堅実な計画である。しかしそれと同時に、将来の企業の継続・発展を見据えた方策・将来ビジョンを明確にすべきである。
新産業創出 :海外製品が先行している市場において、数少ない日本発の医療デバイスとして国産が育つことの意義は極めて大きい。
総合・その他 :技術成果および事業性に関しては、充分に当初の想定を実現しており、製造販売の認可状況にもよるが、ほぼ成功したと評価できる。
日本に数少ない医療ベンチャーとして今後の展開が期待されるだけに、より大きなビジョンとプランを持って事業を進めて行くことを期待する。


(6)フォトニック結晶による偏光子
リーダー :川上 彰二郎
サブリーダー :佐藤 尚(東北大学 電気通信研究所 助手)

1 )) 研究開発の概要
 フォトニック結晶の特異な光学特性を利用した、新原理に基づく高性能偏光子の研究開発を行う。凹凸パターン化した基板上にSi/SiO2の薄膜を凹凸形状を保存したまま交互積層し作製する。従来素子に比べて、大面積・低価格が可能になり、光通信用デバイスとして幅広い利用が期待される。

2 )) 事後評価内容
A)成果
 光通信用(波長1.55μm帯)をターゲットとして、新規装置の設計・購入により大面積で均一なフォトニック結晶作製技術を確立した。従来の偏光子と比べて同程度以上の光学特性を持ち、薄型、大面積、高信頼性を達成した。本素子を搭載する応用デバイスとして光アイソレータや偏波合成モジュールを考案し、小型で高い信頼性を実証することにより素子の有用性を示した。これらの成果をもとに、株式会社フォトニックラティスを設立した。
特許出願数:2件(研究開発終了時点)
B)評価
計画の達成度 :ほぼ計画通りに研究開発が行われ、偏光子の性能は目標をクリアしたが、さらにコストパフォーマンスの観点からの評価が必要である。
知的財産権 :偏光子の応用に特化した特許が出願されている。特許マップ等を作成し、企業として今後必要な特許について整理する必要がある。
起業化計画 :量産化の確立などクリアしなければならない課題もあるが、大学のインフラを有効活用する等、起業化計画、構想ともほぼ妥当なものと思われる。また、展示会に出展し良好な反応を得るなど、ビジネス計画に着実性がある。
新産業創出 :フォトニック結晶技術をベースにした製品は、可視光から赤外光領域にわたって適用可能であり、光通信市場、OA&コンシューマ機器市場、バイオ医療機器、半導体検査機器市場、など広範な市場を対象にできる。
総合・その他 :光市場はIT不況の後遺症が続いており、主力製品の需要が少なく、売上規模が立ち上げ後急激に増大することは難しいと思われるが、現実の産業界に近いニーズのある分野を狙った製品開発をしており、堅実に製品を上市していける起業となると思われる。光市場が数年内に再拡大するときに成長が期待できる。

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This page updated on May 19, 2004

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