本新技術の背景、内容、効果は次のとおりです。
(背景) |
手間無く屋上緑化を実現することが望まれている。 |
都市のヒートアイランド対策の1つとして、地表面被覆の改善が挙げられており、中でも屋上緑化等の人工地盤上緑化は、有効な方法として注目されています。しかしながら、多くの屋上を緑化するためには、既存の建築物へ対応するため、
○ | 植物・土壌・灌水設備等の屋上緑化システムの軽量化 |
○ | 建築物への負荷低減化、施工法の簡易化 |
○ | 維持管理の低減化 |
が求められています。従来、灌水設備なしに屋上緑化を実現するために、保水性のあるゲルを土壌に配合することが試みられていましたが、ゲルが塩とカルシウムのイオン交換を促進し、植物の生育を阻害するため、実現されていませんでした。その他の技術でも、土壌重量、灌水用配管敷設など積載荷重や施工面で建築物への負荷が大きく、維持管理費用が嵩むなど特に既存の建築物への屋上緑化実現には困難な状況でした。そのため、軽量で施工性が良く、維持管理低減可能な屋上緑化技術が求められていました。
(内容) |
植物が良く育つ(植物の生育を阻害しない)高保水性ゲルを配合した人工軽量土壌を用いた屋上緑化技術に関するものです。 |
本新技術は、高保水性人工軽量土壌とトレーユニットにより、施工・維持管理低減が可能な屋上緑化技術に関するものです。
本新技術による高保水性ゲルは、植物の生育に重要なカルシウムイオンの吸収量を低減できるため、植物の生育阻害を防ぐことが可能です。紙おむつ用ゲルの製造設備を使えるため、低価格で大量生産できます。そのゲルを配合した人工軽量土壌とトレーユニットを用いることで、ほぼ自然灌水のみで植物が生育する屋上緑化システムを実現しました。本新技術による屋上緑化システムに植栽したコウライシバは、人為的に30日間(※)無灌水状態を作った環境下で95%生存しました。
試験期間 | 平成15年9月の30日間 |
芝生存率 | 95% |
湿潤時重量(高保水性人工軽量土壌、トレーユニット、コウライシバ) | 100.8kg/m2 (土厚13cm) |
※ | 気象統計上、50年程度の確立で起こりうる雨の降らない一般的な期間として設定
(1977-1996年の20年間、夏期の東京における無降雨記録は18日間、降水量1mm以下は、33日間) |
(効果) |
施工、維持管理が低減でき、多くの建築物に屋上緑化可能です。 |
本技術による屋上緑化システムは、施工性が良く、超薄層芝緑化(土厚6cm)から中高木緑化まで汎用性があります。自然灌水のみで多くの植物が生育するため、灌水等の維持管理がほぼ不要です。超薄層芝緑化(土厚6cm)は、約1週間無灌水状態で芝の生育が確認されています。また、重量が60kg/m2以下のため、地震時積載荷重を満たします。そのため、屋上等の人工地盤上の緑化への利用が期待されます。
|