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別紙2

平成20年度第3回 委託開発および委託開発FS課題の内容

1.平成20年度第3回 委託開発の採択課題の内容

課題名準天頂衛星を利用した高精度位置情報実用化システム
新技術の代表研究者電子航法研究所 衛星技術部 主幹研究員 坂井 丈泰
開発実施企業財団法人 衛星測位利用推進センター
新技術の内容
 本新技術は、GPSナビなどのユーザに高精度の位置情報を提供するシステムに関するものである。従来、わが国で使用されているGPSナビなどは、単独では約10mの測位精度が限界であり、移動体測位などには十分な精度とはいえない。
 本新技術では、衛星からの測距信号を正確な位置が分かっている基準局で受信し、測位結果と真の位置との差を補正情報としてユーザに送信することにより、測位精度の向上を可能とする。また、高層建築物や高山の影響を受けない高仰角にある準天頂衛星を送信に利用することで、都市部や山間部を含めた広範囲で受信できるだけでなく、信号を早く安定的に受信できるので、GPS携帯やカーナビなどの高性能化への展開が期待できる。

課題名カセット式血液透析システム
新技術の代表研究者九州保健福祉大学 保健科学部 臨床工学科 教授 竹澤 真吾
開発実施企業旭化成クラレメディカル株式会社
新技術の内容
 本新技術は、血液回路をカセット化した血液透析システムに関するものである。従来、血液回路は透析毎に手作業で装着することから熟練と時間を要し、また、装置内に配管される透析液回路はメンテナンスが困難であった。
 本新技術では、中空構造体の製造可能な射出成形法を用いて血液回路をカセット化することと透析液回路を簡易化することで、装置のセットアップと保守が容易になり、透析機に陽圧透析を採用することで小型化も可能となる。これにより、在宅血液透析システムの展開と共に海外での透析システムとして期待される。

課題名環境対応型難燃化処理剤の製造技術
新技術の代表研究者産業技術総合研究所 環境化学技術研究部門 主任研究員 韓 立彪
開発実施企業片山化学工業株式会社
新技術の内容
 本新技術は、共有結合で高分子樹脂骨格内にリンを導入することが可能なビニルホスホン酸エステル類を環境対応型難燃化処理剤として、低コストで大量に生産する製造技術に関するものである。従来、同化合物の合成には、高価な触媒を使用した多段プロセスが必須で、ホスゲンなど毒性の高い物質を原料に使用する問題があり、試薬レベルでの製造に止まっていた。
 本新技術により、安価な新規の触媒を利用することで、安全性の高い原料から1段階工程で高収率にビニルホスホン酸エステル類を大量に合成することが可能となる。これにより、従来の難燃化処理剤が抱えていた問題点が克服され、環境対応型難燃化剤への適用が期待される。

2.平成20年度第3回 委託開発FSの採択課題の内容

FS課題名活性酸素種による組織障害診断用モニタリング装置
新技術の代表研究者山口大学 大学院医学系研究科 教授 前川 剛志
開発実施企業日本光電工業株式会社
新技術の内容
 本新技術は、電気化学的センサーを用い、脳虚血再灌流障害や敗血症などの原因と言われる活性酸素種をリアルタイムに測定する装置に関するものである。従来、生体物質を利用した活性酸素種のバイオセンサーが報告されていたが、安定性や繰り返し使用に問題があった。
 本新技術は、金属ポルフィリン錯体重合膜を使用した電気化学的センサーで、生体内活性酸素種の1つであるスーパーオキシドアニオンラジカルを持続的にモニターすることにより、医療従事者が適切な時期に適切な薬剤を注入することを可能とする。患者の予後の改善などへの寄与が期待される。