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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-スイス研究交流」
平成20年度新規課題 採択一覧

研究交流課題 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題概要
スイス側
研究代表者
1 角膜再生医療の新規基盤技術開発を目指した角膜幹細胞の細胞動態の解明 木下 茂 京都府立医科大学 眼科学教室 教授  本研究交流は、角膜幹細胞および細胞外環境に関する分子動態を解明し、角膜幹細胞の移植技術を新規に開発することを目的とする。
 具体的には、日本側の角膜再生医療の臨床経験と、スイス側の卓越した培養表皮細胞移植技術を組み合わせ、生体外で移植可能な人工の角膜幹細胞を再現する。
 日本とスイスが本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、難治性角膜疾患に対するヒト角膜幹細胞移植技術が広く一般に普及することが期待される。
Yann Barrandon
(ヤン・バランドン)
スイス連邦工科大学 ローザンヌ校 幹細胞ダイナミクス研究室 教授
2 電顕を用いた単粒子画像解析技術の開発による膜タンパク質構造決定の促進 佐藤 主税 独立行政法人 産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 グループリーダー  本研究交流は、単粒子画像解析技術の高解像度化を進めることで膜たんぱく質構造決定を促進させることを目的とする。
 具体的には、日本側の単粒子解析の画像解析ソフト開発における実績と、スイス側の走査型電子顕微鏡と画像処理プラットホーム構築に関する技術を組み合わせ、膜たんぱく質複合体の解析を実現する。
 日本とスイスが本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、たんぱく質の構造解析に道を拓き、創薬研究を加速するとともに、電子顕微鏡分野にとどまらない、医科学分野の高ノイズな画像の解析にも導入可能な情報処理技術を確立することが期待される。
Andreas Engel
(アンドレアス・エンゲル)
バーゼル大学 M.E.ミュラー研究所 教授
3 胸腺髄質の無差別遺伝子発現とサイトカイン制御によるT細胞再教育:自己免疫疾患治療の新戦略 高濱 洋介 徳島大学 疾患ゲノム研究センター センター長  本研究交流では、先進国における成人女性の主要な死因である自己免疫疾患の病因の解明と根本的治療法が開発することを目的とする。
 具体的には、T細胞による胸腺髄質形成を担うサイトカインRANKLを同定した日本側の実績と、胸腺髄質上皮細胞の無差別遺伝子発現を担う分子Aireに関するスイス側の知見を組み合わせ、胸腺髄質上皮細胞の無差別遺伝子発現機構の解明とT細胞再教育による自己免疫疾患治療の新規治療法を確立する。
 日本とスイスが本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、医療技術・産業への社会貢献だけでなく、遺伝子発現ランドスケープ解析技術やインフォマティクス解析技術をとりいれた分子細胞免疫学的研究としての学際的貢献が期待される。
Georg Andreas Peter Holländer
(ゲオルグ・アンドレアス・ペーター・ホーランダー)
バーゼル大学 小児病院/同大学 生命医学研究所 教授
4 テトラヒメナ組換体とクライオ電子顕微鏡法を用いた繊毛の構造解析 豊島 陽子 東京大学 大学院総合文化研究科 教授  本研究交流では、繊毛関連疾患の分子メカニズムを繊毛構成分子の三次元構造解析で明らかにすることを目的とする。
 具体的には、日本側における世界初の繊毛構成たんぱく質の相同組換技術と、スイス側の電子線クライオトモグラフィによる繊毛・鞭毛の構造研究技術を組み合わせ、生体内での繊毛構成たんぱく質の構造・機能連関を明らかにする。
 日本とスイスが本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、繊毛関連疾患の治療に貢献し、さらにマイクロロボット工学業界にも繊毛・鞭毛の動作原理解明から多大な影響を与えることが期待される。
石川 尚 スイス連邦工科大学 チューリヒ校 生物学部 グループリーダー