平成20年度第2回 委託開発および委託開発FS課題の内容
1.平成20年度第2回 委託開発の採択課題の内容
課題名 | 植物資源由来生分解性樹脂 |
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新技術の代表研究者 | 理化学研究所 理事 土肥 義治 |
開発実施企業 | 株式会社カネカ |
新技術の内容 本新技術は、植物油脂を原料とする生分解性樹脂に関するものである。ポリ乳酸など従来の生分解性樹脂は硬質で耐熱性が低いものが多く用途が限定されていた。 本新技術は遺伝子組換え法による発酵生産技術を応用し、軟質性、耐熱性を有する生分解性樹脂の生産性を向上させることを可能とするもので、合成段階まで微生物により発酵、生産し水系精製するクリーンなプロセスという特徴がある。 本新技術による生分解性樹脂は、軟質性を有しフィルム状に加工が可能であるため、環境負荷の低い農業用マルチフィルムなどへの実用化が期待される。 |
課題名 | ホウ素中性子捕捉療法用ホウ素薬剤 |
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新技術の代表研究者 | 大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科 教授 切畑 光統 |
開発実施企業 | ステラファーマ株式会社 |
新技術の内容 本新技術は、ホウ素同位体を取り込んだがん細胞に熱中性子線を照射し、低エネルギーの核分裂反応によってがん細胞のみを破壊する治療法に関するものである。従来より脳腫瘍や頭頸部がんは外科的手術が困難であり、有効な治療法が確立されていなかった。 本新技術では、がん細胞が特異的に破壊されるため、悪性度の高いがん種に対しても副作用の少ない治療を実施することが可能となることから、難治性がんの治療効果に加え、副作用の低減による患者のQOLの向上も期待される。 |
課題名 | ヒト化抗体を用いた悪性中皮腫治療薬 |
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新技術の代表研究者 | 東京大学 医科学研究所 教授 森本 幾夫 |
開発実施企業 | キッセイ薬品工業株式会社 |
新技術の内容 本新技術は、新規のヒト化抗CD26抗体を用いた、悪性中皮腫の治療法に関するものである。従来は、化学療法薬の併用がもっとも有効とされているが、いまだに治療効果は十分ではなく、また副作用面でも問題が残されている。 本新技術は、悪性中皮腫細胞膜の表面に発現しているCD26抗原に対する、新規のヒト化抗体を用いるものであり、悪性中皮腫に対する新たな分子標的薬となる可能性がある。 本新技術により悪性中皮腫に対する、より有効で安全性の高い治療法の確立が期待される。 |
課題名 | 歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ |
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新技術の代表研究者 | 日本歯科大学 生命歯学部 教授 渋井 尚武 |
開発実施企業 | 株式会社モリタ製作所 |
新技術の内容 本新技術は、生体に酷似したヒト型患者ロボットを用いた対話型歯科臨床実習教育シミュレーションシステムに関するものである。従来の口腔模型を用いた研修では生体に対する配慮ある実習は難しく、また臨床実習に適した患者の確保も困難になりつつあることから、診療をリアルに再現する教育シミュレータの開発が望まれていた。 本新技術によるヒト型患者ロボットシミュレータでは、瞬時の応答が必要な対話型臨床実習が可能になるだけでなく、研修者の一連の実習行為が時系列に記録、再生、評価できることから、客観的なフィードバックが可能となり、臨床技能の向上と教育の効率化を通じて安全でヒトに優しい医療への貢献が期待される。 |
課題名 | 農業用殺虫性へテロ環化合物 |
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新技術の代表研究者 | 岐阜大学 教育学部 化学科 教授 利部 伸三 |
開発実施企業 | 株式会社クレハ |
新技術の内容 本新技術は一剤で広範囲の害虫を防除するへテロ環化合物の農業用殺虫剤に関するものである。従来の有機リン系、カルバメート系、ピレスロイド系などの殺虫 剤では、抵抗性をもつ害虫の出現や使用方法が限定されているなどの問題がある。また、ネオニコチノイド系殺虫剤においては、特定の害虫には高い防除効果を 示すが、防除効果が低い害虫もあり、複数の殺虫剤を併用する必要がある。加えて、有用生物への安全性も懸念されている。 本新技術により、低薬量により一剤で広範囲の害虫の防除が可能となることから防除作業の軽減、環境負荷の低減が期待される。 |
2.平成20年度第2回 委託開発FSの採択課題の内容
FS課題名 | コロイダル量子ドットを用いた面紫外光源 |
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新技術の代表研究者 | 大阪大学 大学院 工学研究科 准教授 小俣 孝久 |
開発実施企業 | HOYA株式会社 |
新技術の内容 本新技術はコア/シェル型の酸化亜鉛(ZnO)の量子ドットによる面紫外光源に関するものである。従来、ZnOは紫外発光用材料として有力視されながらも、量子ドット合成や多結晶基板上への形成の問題から実用化が困難であった。 本新技術では、ZnOナノ結晶コアを格子整合性の高い酸化物をシェル材料として被覆することで、無輻射失活の小さい量子ドットの製作が可能となり、多結晶基板上に量子ドット発光層を形成することで、均一性の高い高効率な面発光素子が実現できる。 本新技術により露光用水銀光源の代替が可能となり、低コスト化および、省エネルギー・水銀フリーといった環境面への寄与が期待される。 |
FS課題名 | 改良垂直ブリッジマン法による酸化物結晶の製造技術 |
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新技術の代表研究者 | 信州大学 工学部電気電子工学科 客員教授 干川 圭吾 |
開発実施企業 | 株式会社オキサイド |
新技術の内容 本新技術は、垂直ルツボ内固化法に、融液組成の制御と成長結晶に加わる応力を低減する手法を付加することで、均質な圧電結晶を低コストで生産する技術に関するものである。従来より一致溶融組成の圧電結晶は製造されているが、耐環境性や圧電能力が不十分であり、また低コスト化も難しくその用途は限られていた。 本新技術により、結晶と異なる組成を持つ融液からの析出を制御する事で、分解溶融組成を持つ圧電素子を製造することが可能となり、価格競争力のある種々のセンサーへの応用が期待できる。 |
FS課題名 | 血液抗体マーカーを用いた動脈硬化診断キット |
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新技術の代表研究者 | 千葉大学 大学院医学研究院 准教授 日和佐 隆樹 |
開発実施企業 | 藤倉化成株式会社 |
新技術の内容 本新技術は、発現クローニング法を用いて、動脈硬化患者血清中に有意に、特異的に存在する抗原タンパク質を同定し、マーカーとして活用することにより、動脈硬化の状態を直接測定できる簡便な診断キットに関するものである。これまで、動脈硬化の診断としては超音波試験、MRIなどが用いられているが、コスト、簡便性、および精度などの点で十分であるとは言いがたい。 本新技術により、動脈硬化患者群と健常者群で有意差を示す複数種の抗原が確保される事で、動脈硬化の早期発見や病態診断、術後経過把握などへの寄与が期待される。 |