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<用語解説>

注1)蛍光プローブ
 着目する観測対象分子・環境を、生きている状態の細胞で観測するために必要な代表的な分子ツール。ほぼ全ての生体関連分子は無色、無蛍光であるため、この動きを通常の顕微鏡で観測することはできません。そこで観測対象分子と反応・結合、あるいは観測対象環境下に置かれて初めて蛍光を発する蛍光プローブを細胞内に導入し、蛍光顕微鏡を用いて観測する技術が近年広く利用されています。観測したい対象に対して、それを特異的に検出可能な蛍光プローブの開発が必要不可欠で、現在多くの蛍光プローブ開発研究が盛んに行われています。

注2)エンドサイトーシス経路
 細胞外に存在するたんぱく質、リガンドなどを細胞内に取り込むための1つの機構。細胞膜上に存在する受容体を介して起こる例が多く、細胞膜が受容体ごと陥入してエンドソームと呼ばれる小胞を形成して、細胞内に取り込まれ、エンドソームの多くは最終的にリソソーム(注3参照)へと融合されます。

注3)リソソーム
 細胞内オルガネラの1つ。さまざまなたんぱく分解酵素、糖分解酵素などが集積しており、細胞が生きていくために必要な分解反応を司る小器官です。生きている状態の細胞では、リソソーム内は酸性に保たれており、そのpHは5程度であると考えられています。

注4)BODIPY
 Boron Dipyrromethene骨格を持つ一連の蛍光団の総称で、置換基によって500nmから700nm程度の明るい蛍光を発するさまざまな誘導体が存在します。全般に蛍光量子収率が高いためその蛍光は明るく、またその蛍光特性が周辺環境(pH、誘電率など)にほとんど影響されない特長を持つ蛍光団です。

注5)Herceptin(ハーセプチン)
 Trastuzumab(商品名Herceptin)という抗HER2受容体モノクローナル抗体が米国を皮切りにすでに認可され、乳がん治療薬として使われるようになっています。

注6)上皮成長因子受容体(EGFR)
 EGFRは種々の悪性腫瘍で過剰発現がみられる受容体で、この受容体に対する抗体が抗がん医薬抗体としてすでに米国では認可されています。上述したHerceptinもその1つで、HER2と呼ばれるEGFRに結合し、がん細胞に取り込まれることが明らかとなっています。

注7)エタノール注入技法
 がん治療法の一種で、がん部位内にエタノールを直接注入してがん細胞を死滅させる手法です。上部消化管がん、肝細胞がんなどを、内視鏡で観察しながらがん部位に純エタノールを注入することで、たんぱく変性作用などによりがん細胞を死滅させることを狙った治療法です。