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<用語解説>

注1)マルチフェロイック物質
 強磁性、強誘電性、強弾性などの強的な秩序が2つ以上備わることをマルチフェロイズム(マルチフェロイック性)と言い、マルチフェロイズムを示す物質のことをマルチフェロイック物質と呼びます。ただし、ここでは特に強磁性、強誘電性の両方を併せ持つ物質のことをマルチフェロイック物質と称します。

注2)多値メモリー
 1個のメモリーセルに2値を超える情報を蓄積できるメモリーのことを言います。今回は、2つ以上の秩序状態を持つマルチフェロイック物質でそれを実現しています。

注3) レーザーアブレーション法
 固体物質に強いレーザーを照射すると、固体物質の原子がさまざまな形(原子、分子、ラジカル、イオン、クラスターなど)で爆発的に放出されます。この現象をレーザーアブレーションといい、これを利用して放出された原子などを堆積させ薄膜などを作製することをレーザーアブレーション法と言います。

注4) 超格子
 いくつかの種類の結晶格子が規則正しく配列することによって、その周期が元の結晶格子の周期よりも長くなった結晶格子のことを言います。

注5) 電気磁気効果
 電気と磁気が物質中で相互作用する働きのことを示します。具体的には、磁場によって電気分極が生じ、電場によって磁化が生ずる作用を表します。

注6)Aサイト、Bサイト
 立方晶のペロブスカイト物質では、酸素イオンが作る正八面体の中心に金属イオンが配位しますが、この位置をBサイトといいます。また、その正八面体を囲む立方体の頂点にも金属イオンが配位しますが、その位置をAサイトといいます。この呼び方は立方晶だけでなく正方晶や斜方晶などの場合でも使われます。

注7)Kanamori-Goodenough則(K-G則)
 局在したd電子が持つスピン間の超交換相互作用と直接交換作用の符号と大小から、強磁性相互作用と反強磁性相互作用のどちらが優勢になるかを論じた法則。この法則を用いれば、Fe3+とCr3+がO2-を介して180度に近い角度で直接結合しているとき、Fe3+とCr3+のスピンの向きが同じになることが導かれます。

注8)ウエットエッチング
 物質を腐食溶解する液体でエッチングすること。それに対して、ガス状のイオンやラジカルで行うエッチングのことをドライエッチングといいます。

注9)RHEED振動
 薄膜成長中の物質表面の周期性を知るためにしばしば高速電子線回折(RHEED)が用いられますが、薄膜が1原子層ずつ成長しているとき、RHEEDの特定の回折点(普通は鏡面反射点)の強度が周期的に振動します。その振動のことをRHEED振動といいます。