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科学技術振興機構報 第507号

平成20年4月14日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報課)
URL https://www.jst.go.jp

微生物による着色排水の脱色処理システムの開発に成功

 JST(理事長 北澤 宏一)はこのほど、独創的シーズ展開事業 委託開発の開発課題「着色排水のバイオ脱色処理システム」の開発結果を成功と認定しました。
 本開発課題は、大阪教育大学 講師 杉浦 渉(元 大阪府立公衆衛生研究所 主任研究員)の研究成果をもとに、平成17年10月から平成19年10月にかけて三木理研工業株式会社(代表取締役会長 三木 保典、本社住所 和歌山県和歌山市栄谷13-1、資本金1500万円、Tel:073-451-2271)に委託して、企業化開発(開発費約1億5800万円)を進めていたものです。
 本新技術は土壌中や枯草、人間の体などにも存在する微生物のバチルス菌注1)を用いて、染色工場の大半で使用されているアゾ系染料注2)を含有する着色排水を生物学的に脱色処理するシステムです。
 現在、工場などの排水による環境汚染の防止のために水質汚濁防止法や自治体の条例による排水規制が行われています。染色工場では、これらの排出基準を守るために活性汚泥法注3)凝集沈殿法注4)を組み合わせた着色排水処理を行っています。しかし、多量の化学薬剤の投与は多量の汚泥を発生させることから、ランニングコストの上昇や汚泥の最終処分場の不足などの問題を引き起こしています。
 本開発では、実際の染色工場に着色排水処理の実証プラントを設置し、約1年半にわたって実証試験を行いました。本システムでは微生物処理を中心に排水処理を行うことから運転管理が難しいため、実証試験において各工程施設の改良を行いながら運転条件を確立しました。
 その結果、処理水の着色度は実証施設のある和歌山市の規制値を達成し、従来法に比べて、排出汚泥量は約1/5に低減され、ランニングコストも1/2程度となりました。
 本技術が確立することで、脱色が難しかったアゾ染料を含む着色排水の生物学的水処理が可能となり、公共水域(河川・湖など)や地下水の汚染を防止すると期待されます。

 本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) 着色排水の規制に伴い、染色工場のランニングコスト削減が求められています。

 現在、工場等の排水による環境汚染の防止するために、水質汚濁防止法や自治体の条例による、透明度や色度、COD注5)BOD注6)などの規制が行われています。これらの基準を守るために染色工場では、活性汚泥法と凝集沈殿法を組み合わせて着色排水を処理しています。
 しかし、自治体が導入している着色排水の数値規制を達成するために、より多量の化学薬剤を投入することから、多量の汚泥が発生し、薬剤費や汚泥廃棄処分費、人件費などのランニングコストが上昇しています。また、汚泥を廃棄する最終処分場の不足も大きな課題となっています。これらの問題に対応し、着色排水による汚染防止を進めるためには、低コストおよび低汚泥の着色排水処理システムを確立する必要があります。

(内容) 生物的処理(バチルス菌)による排水処理システムを開発しました。

 本技術は染色工場で多く利用されているアゾ系染料をバチルス菌(OY1-2株)(図1)を用いて分解(図2)する脱色排水処理システムです。
 本システム(図3)は、システム内でバチルス菌を培養し、バイオリアクター槽(脱色槽)へ投与して染料を分解します。次に活性汚泥槽を組み合わせることによってBODなどを除去します。新たに追加する設備は、バチルス菌培養槽やバイオリアクター槽(脱色槽)などで、活性汚泥槽は現行のものを利用します。
 本開発では、和歌山市内の染色工場に着色排水処理の実証プラントを設置し、約1年半にわたり実証試験を行いました。本システムでは微生物処理を中心に排水処理を行うことから運転管理が難しいため、実証試験によりバチルス菌培養槽やバイオリアクター槽(脱色槽)、活性汚泥槽の最適な運転条件を確立しました。
 その結果、処理水の着色度は実証施設のある和歌山市の規制値(着色度注7):1ヶ月間の日間平均80倍以下、最大120倍以下)をクリアしました。また、凝集剤を使用しないことから排出汚泥量は従来法に比べて、約1/5程度に低減され、ランニングコストも約1/2程度です。BODやCODの除去率も80~90%と優れています。

(効果) 低コストな着色排水処理システムの確立と環境汚染防止が期待されます。

 本新技術によって低コストで排出汚泥量の少ない着色排水処理システムが確立されることで、既に着色排水規制が設定されている和歌山市、川崎市、三郷市などの自治体はもとより、今後、規制が進むと予想される全国の着色排水による水質汚染対策に貢献するものと期待されます。
 また、染色工場において経営を圧迫する凝集処理の薬剤費および汚泥処理費を削減できることから処理コストの低減が見込めるだけでなく、排出汚泥の削減により環境負荷も低減します。さらに、最終処分場不足の問題解決にもつながることものと期待されます。

図1 バチルス菌とバチルス菌担持体
図2 アゾ系染料の分解反応式
図3 排水処理システム
<用語解説>
開発を終了した課題の評価

<問い合わせ先>

三木理研工業株式会社
〒640-8441 和歌山県和歌山市栄谷13-1
中川 和城(ナカガワ カズキ)、堀 公二(ホリ コウジ)
Tel:073-451-2271 Fax:073-451-2639

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