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資料1

新規研究開発領域の概要

 地球温暖化と大規模な気候変動の危機の解決は、私たち人類の活動が環境と共生しえない水準に達したことから発生している多様な問題の中でも、最も重要な課題の1つとなっています。
 しかし、脱温暖化に向けた取り組みでは、観測や分析、新しいエネルギーなどの先端的な技術の開発を進めることに重きが置かれ、技術を私たちの生活の中に生かしていく方法を、社会のシステムも含めて見直そうとする試みはあまり実施されてきませんでした。
 また、環境破壊や都市への集中が引き起こす過疎や地域の活力低下などの問題も、地球温暖化問題と同様、私たち人類の活動の急激な変化によるものですが、これまで環境共生や地域再生の取り組みと脱温暖化に向けた取り組みの間には十分な連携はありませんでした。

 「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域では、脱温暖化に関する課題を、技術だけではなく自然環境や社会制度、地域再生を含む統合的な問題として科学的に整理・分析し、本格的な解決の方向を見出していくことを目指します。そのために、科学技術と社会との対話をうながし、新しい取り組みや提言につながる、地域に根ざした実践的な研究開発プロジェクトを推進します。

<取り組むべき研究開発プロジェクトについて>

 「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域では、人文社会科学系および自然科学系の研究者とともに地域が一体となって取り組む、以下のような研究開発プロジェクトを推進します。

(1)地域に根ざした実践的な取り組みとその成果を広く活用するための一般化、体系化の試み。関連する既存の制度や取り組みの整理、分析。
例)
・環境、社会システムに配慮した再生可能エネルギー、未利用資源の導入
・温室効果ガス吸収に着目した地域資源(里山など)の再評価やその維持管理の仕組みづくり
・脱温暖化・環境共生に着目した従来の取り組みの再評価と改善に向けた取り組み
・脱温暖化・環境共生を目指す取り組みに向けた新たな地域コミュニティの形成
・生活者の活動、価値体系の見直しや合意形成の方法論開発
・地域における取り組みの成果の一般化・体系化と効果的な展開方法の検討

(2)地域の新しい価値を見出すための手法の開発。新しい価値の評価手法、普及方法の開発。
例)
 自然環境や生態系の豊かさ、生活様式、景観、文化、伝統など多種多様な地域の資源を活用した活力ある地域づくりを、脱温暖化・環境共生の取り組みと連携させて進めるための方法の考案。その実現のために必要な新しい価値の評価手法、およびそれらの普及方法の開発。