JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第481号 > <用語解説>

<用語解説>

注1)対症療法
 軟骨損傷の対症療法として、軽度の症状に対しては消炎鎮痛剤やヒアルロン酸などによる薬物療法、重篤な損傷に対しては骨軟骨柱移植や人工関節置換などによる手術療法が、それぞれ用いられてきた。薬物療法は原因となる軟骨損傷を根治するものではなく、治療を止めると症状が再発するという問題点があった。人工関節には耐用年数があり、永続的な治療とはなり得なかった。また、骨軟骨柱移植では移植部位の軟骨形状が再形成されないこと、移植片採取後の箇所に欠損が残ること、治療が移植片を採取する量に制限されること、などの問題点が指摘されていた。

注2)アテロコラーゲン
 コラーゲン分子の両端(テロペプチドと呼ばれる部分)を酵素で切断したのち、これを除去して精製したコラーゲンのこと。テロペプチドは種差が大きく抗原性の原因となるが、アテロコラーゲンはテロペプチド部分を除去しているため、抗原性が低くなる。コラーゲンは動物の体を構成する主要なたんぱく質であり、生体との適合性が非常に高いため、再生医療の支持体としてはポピュラーなものの1つである。本開発課題で使用しているアテロコラーゲンは、既に日本で医療機器として承認されており、形成外科や外科など臨床での使用実績も多い。

注3)三次元培養
 ゲルやスポンジ、高分子ポリマーなどの支持体に細胞を接着させ、立体的な構造を取らせて培養する培養方法。一般的な細胞の培養では、二次元(平面)で細胞を増殖させるが、軟骨細胞をこの方法で培養すると、軟骨細胞本来の性質を失ってしまうことが指摘されていた。三次元培養を行うことで、軟骨細胞本来の形質を維持したまま増殖することが可能となるうえ、軟骨細胞がゲルの中に入っている状態で移植されるため、患部への固定が確実に行えるなどの利点も大きい。

注4)自家培養軟骨移植
 本新技術では、軟骨を欠損した患者から少量採取した軟骨細胞を用いて培養軟骨を作製し、その患者本人に移植する。この方法は自家培養軟骨移植と呼ばれ、本人の細胞を用いることから免疫による拒絶反応がほとんどないという利点がある。