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開発を終了した課題の評価

課題名 「自動制御培養法を用いたヒト培養軟骨」
所有者 越智 光夫、田谷 正仁、株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
研究者 広島大学教授 越智 光夫、大阪大学准教授 紀ノ岡 正博
委託企業 株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
開発費 約456百万円
開発期間 平成12年3月~平成19年9月
評価

 本新技術は、関節軟骨を損傷した患者から少量の軟骨組織を採取し、軟骨組織から分離した軟骨細胞をアテロコラーゲン中で培養したのち、患者自身の軟骨欠損部へ移植して軟骨損傷を治療する技術である。
 軟骨組織はいったん損傷すると自己治癒しないため外傷や軟骨どうしの摩擦などで変性すると疼痛や関節可動域異常等を生じる要因となり日常生活に支障をきたすなど大きな問題となっていた。
 本開発では根本的治療ができない軟骨損傷に対して再生医療による軟骨再生技術を確立した。まず培養担体の選択および至適濃度の検討を行うとともに、製造方法の最適化を行った。また、培養軟骨の有効性および安全性に関する評価項目を決定し、それらに対する品質試験法を確立した。そして動物を用いた移植試験によって安全性および有効性を確認し、日本で培養軟骨として初めての治験確認申請の適合を受けた。臨床試験は国内で関節外科を専門とする複数の大学病院および医療機関で実施され、安全性・有効性ともに良好な成績を示した。
 これらの結果は成否認定基準である「ヒト培養軟骨製品が動物実験および臨床試験において、安全性と有効性が確認されること。」を満足するものであり、開発を成功と判断するのが妥当であると考える。
 本新技術は、軟骨損傷を患者自身の軟骨細胞によって治療できるという点で画期的であり、今後の治療を大きく変える可能性を秘めている。日本社会の高齢化が進むにつれ、関節症患者がさらに増加することが見込まれており、関節の痛みに苦しんでいる人々のQOL改善技術として期待される。

評価者 独創的シーズ展開事業 委託開発
プログラムディレクター  今成 真
プログラムオフィサー  中川 威雄、吉村 進、桐野 豊
評価日 平成19年12月19日