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<用語解説>

注1)ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PI(3,4,5)P3)
 PI(3,4,5)P3は、骨格であるホスファチジルイノシトール(PI)の3,4,5水酸基がリン酸化を受けて生じます。PI(3,4,5)P3の細胞内の量は通常低く抑えられています。種々の受容体刺激に伴い、細胞内でホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼ)が活性化されると、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸〔PI(4,5)P2〕のイノシトール環3位の水酸基がリン酸化され、PI(3,4,5)P3が産生されます。産生されたPI(3,4,5)P3は、たんぱく質キナーゼや低分子量Gたんぱく質の制御因子などさまざまな機能たんぱく質に結合し、それらの活性化を導くことで、細胞の生存や増殖、運動など、さまざまな細胞機能を制御しています。

注2)ダイニン・ダイナクチン複合体
 ダイニンは、細胞骨格である微小管上をエネルギー依存的に動くモーターたんぱく質です。動きには方向性があり、微小管のプラス端からマイナス端に向かって動きます。ダイナクチンは複数のサブユニットからなる複合体で、微小管と結合する部分、ダイニンと結合する部分、アクチン様フィラメントを形成する部分からなります。微小管と膜小胞をつなぐ役目があると考えられています。

注3)多発性嚢胞腎病
 腎臓に多数の嚢胞が発生・増大し、腎臓以外の臓器にも障害を引き起こす遺伝性疾患です。変異する遺伝子の種類によってさまざまな病態がありますが、PKD遺伝子変異による常染色体優性多発性嚢胞腎が最も一般的です。

注4)HeLa細胞
 ヒト子宮頚癌組織から樹立された株細胞です。さまざまな研究分野で研究材料として世界的に広く使われています。

注5)ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼ)
 ホスファチジルイノシトールの3位水酸基をリン酸化するキナーゼの総称です。基質特異性から大きく3つのクラス(クラスI, II, III)に分類されます。PI(4,5)P2をリン酸化してPI(3,4,5)P3を産生するクラスIが最も広く研究されています。