JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報第 411号 > 図2
<参考図>

図2 肺がんにおける2番染色体短腕中の逆位

図2 肺がんにおける2番染色体短腕中の逆位

 2番染色体短腕上には約12Mbp離れたところに、EML4遺伝子(緑色矢印)とALK遺伝子(赤色矢印)がそれぞれ反対向きに存在します。肺がんの一部の症例において、2番染色体上のEML4遺伝子の中とALK遺伝子の中で染色体がそれぞれ切断され、反対向きになって再結合することが示されました(2番染色体短腕中の逆位)。その結果、EML4-ALKとALK-EML4の2種類の新しい融合遺伝子が作られることになります。
 同様の現象によるがん化は、慢性骨髄性白血病においても明らかになっています。同疾患も、患者の染色体に転座が生じた結果、BCRとABLという遺伝子が融合してBCR-ABLというがん遺伝子が作られるため生じます。BCR-ABLたんぱく質もキナーゼ活性を有します。本研究チームが発見したEML4-ALKとがん化機序は似ていると言えます。なお、BCR-ABL選択的にキナーゼ活性を抑制する薬剤(STI571、商品名 グリベック、ノバルティスファーマ株式会社)は、慢性骨髄性白血病に著効を示し、現在、世界的に同疾患治療の第一選択剤となっています。