JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第389号 >用語解説

<用語解説>

注1)ワイドギャップ化合物半導体:
 半導体とは、簡単に説明すれば電気をよく通す金属と絶縁体の中間の性質をもつ物体であり、電流・電圧を増幅させる働きや、電流を光に変換したり、逆に光を電流に変換したりする働きを持つ材料です。
 この半導体の中でも、耐圧特性が高く高周波特性に優れており、また可視光~紫外線の波長領域で光-電流の変換が可能とするためには、半導体の各材料に固有の物性値であるバンドギャップ(禁止帯、禁制帯とも言う)が、現在一般に用いられているシリコン(Si、ケイ素)や砒化(ひか)ガリウム(GaAs)よりも大きいものである必要があります。
 シリコンや砒化ガリウムよりもバンドギャップが大きい材料を一般に「ワイドギャップ半導体」と呼びますが、2種以上の元素の化合物として特性を実現したワイドギャップ半導体を総称して「ワイドギャップ化合物半導体」と呼びます。

注2)昇華法:
 Si(ケイ素)などは常圧で加熱すると融解して液相になるので、液相から固相を再析出させて高品質な単結晶が製造されていますが、窒素アルミニウムを含む一部の物質では、加熱・冷却時に、液体という状態を介さず、固相→気相・気相→固相という相変化を起こします。この現象を利用して、固体原料(粉末など)を加熱して気相にて輸送し、低温部で固相として再析出させ、高品質な単結晶を製造する方法を昇華法と呼びます。

注3)エピウェハ:
 高品質な半導体素子を作製する為には、素子と同種の材料だけからなる単結晶のウェハを用い、この上にホモエピタキシャル成長(同種材料上への結晶成長)により素子を形成する必要がありますが、材料の種類によっては、単結晶ウェハを用いることが、技術的・コスト的に困難な場合があります。このような際、入手がより容易・安価な異種材料を基板として用い、この上に半導体素子と同種の材料の単結晶薄膜をヘテロエピタキシャル成長(異種材料上への結晶成長)したものを、半導体素子用の材料として供することがあります。このような異種材料上に単結晶薄膜を形成した基板(ウェハ)を一般に「エピ基板」「エピウェハ」などと呼びます。
 エピウェハは技術的にも作製が比較的容易であり、コストも相対的に安価となるという利点を有しますが、大型の単結晶の塊であるインゴットから切り出した単結晶ウェハなどと比較すると、格子定数の異なる基板上に作製された単結晶薄膜の結晶品質がどうしても劣ってしまうため、高性能・高信頼性のデバイスが実現困難であるという欠点を持ちます。
 このため、高性能・高信頼性を要求される高品質な素子を作製する際には単結晶ウェハが用いられ、一般的な素子にはエピウェハが用いられるなど、用途に応じて材料が使い分けられています。

注4)HVPE (Hydride Vapor Phase Epitaxy):
 水素化物(hydride)を原料に使用し、化学反応により気相から基板上に結晶を成長させる方法。