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資料1

研究領域の概要および研究総括(相手側研究総括を含む)の略歴等


研究領域「RNAシンセティック・バイオロジー」

研究総括 井上 丹 氏
(京都大学大学院 生命科学研究科 教授)


○研究領域の概要

ポストゲノム研究の潮流の中、これまでに膨大な量が蓄積されてきた分析・分解的な分子生物学・生化学の研究成果を使い、生体分子を「人工的に創り出す」作業を通じて生命システムを再構築し、新しいテクノロジーを誘発しようとする「シンセティック・バイオロジー」分野創成の気運が高まっています。

本研究領域は、この新分野の先進的な開拓を進め、独自に機能性人工RNA やRNA-蛋白質複合体(RNP)創製のための基盤技術を確立し、これを用いた医療応用などに資する細胞機能制御技術などの開発を目指すものです。具体的には、細胞認識、標識、攻撃など複数の機能を備えたRNAおよびRNPを分子デザインにより構築します。さらにそれらのRNAやRNPを用いて、細胞固有のシグナルを検出し、その発現量に依存して細胞の運命を決定する人工シグナル伝達回路のデザインと構築をおこないます。

本研究領域において、特定の機能を持つRNA やRNP の人工的な創製に必要な新技術が確立され、RNAおよびRNP分子デザインの有用性が実証されることが期待されます。また開発されるRNAおよびRNPを基盤とする新しい検査薬、治療薬の開発が可能になり、医療応用などの分野に高いインパクトを与えることが期待されます。これにより本研究領域は戦略目標「医療応用等に資するRNA 分子活用技術( RNA テクノロジー)の確立」に資するものと期待されます。

研究総括 井上 丹 氏の略歴等
(相手国:フランス)相手側研究総括 Dr. Eric Westhof 略歴等



研究領域「ATP合成制御」

研究総括 吉田 賢右 氏
(東京工業大学 資源化学研究所 教授)


○研究領域の概要

ATPは地球のあらゆる生物のほとんど全ての活動においてエネルギー源(通貨)として使用されています。ATP合成は、生物の行う化学反応(代謝)の中でもっとも基幹的で、量的にも最大のものです。生物のATP合成能力と消費需要は、刻一刻変化しています。しかし、それに対応してATPの合成はどのように制御されているかという細胞代謝の基本中の基本は未だ解明されていません。

本研究領域はATP合成酵素の制御の分子機構および細胞生理を解明し、代謝のメカニズム、環境応答ナノ分子マシーン、エネルギー代謝の病態等の理解への貢献を目指すものです。具体的にはATP合成制御の基本的な分子機構を生化学、タンパク質化学、遺伝子工学、遺伝生化学、1分子観察と1分子操作など様々な方法を駆使して解明することを目指します。個々の機構を明らかにした上、統合された制御の全体像を解明します。さらに合成制御の欠陥が生物の個体に病態としてどのように現れるかをトランスジェニック動植物を用いて探索します。

本研究領域において、細胞生物学また分子生物学的に未解決なATP合成酵素の制御という細胞代謝の基本的メカニズムの解明が期待されます。さらに制御の欠陥と生物の病態との関連を明らかにすることにより、エネルギー代謝の制御による新しい治療技術への展開につながることが期待されます。これにより本研究領域は戦略目標「代謝調節機構解析に基づく細胞機能制御に関する基盤技術の創出」に資するものと期待されます。

研究総括 吉田 賢右 氏の略歴等
(相手国:ニュージーランド)Dr. Gregory Cook 略歴等