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別紙3

平成18年度申請課題に関する評価結果

課題名:「都市の安全・安心を支える環境浄化技術開発」
地域名:東京都


(目的)

 天然骨等を原料に高性能な新吸着剤と新触媒を開発しこれらの材料を活用して中小企業向け大風量・低濃度のVOC*処理装置の製品化を実現し、都市の環境を改善するとともに環境ビジネス産業を東京都に創生することを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)環境浄化材料の開発
 (2)有害ガス・塵埃処理装置の開発

<事業の推進に関して>

 都市の環境浄化に役立つ先端的なシーズを東京都に多数存在する科学シーズの中から取り上げ、都の産業集積を生かして企業が持つ優れた技術力によって産業化するとの視点より、大学と企業を結集して実施体制を築いている。この実施体制により東京都にとって喫緊の課題であるVOC削減に取り組むものであり、環境ビジネスの創出など大きな効果が期待できる。

<研究開発に関して>

 参加する研究機関、企業等はポテンシャルが高く、特に可視光触媒を用いた環境浄化材料の研究開発は世界的にみても高いレベルにある。また、この環境浄化材料を用い研究開発する有害ガス・塵埃処理装置については、研究の斬新さに欠ける面はあるものの、印刷、塗装等の中小事業者を主なターゲットとして実用化・企業化がなされると期待される。
 畜産廃棄物を有効活用する吸着剤の開発は社会的意義もあるが、製品の性能にばらつきが出ないよう品質を保証する技術の構築も必要である。

<成果移転に関して>

 目標とする性能が具体的に示されており、印刷、塗装、クリーニング業界の中小企業から排出されるVOC削減に的を絞れば企業化につながる成果が期待できるが、そのためには、妥当なランニングコストの実現と処理リサイクルシステムの経済モデルの構築が必要とされる。また、可視光応答型光触媒の各種応用特許取得にも期待したい。

<地域による支援に関して>

 都知事を筆頭に東京都の環境問題に対する意識は強く、十分な支援が期待できる。また、副知事のもとに企業化統括を配置し、産業労働局と環境局が連携する実施体制を作っていることも評価できる。

*Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)。

(提案内容)

東京都地域結集型研究開発プログラム
課 題 名:都市の安全・安心を支える環境浄化技術開発
技術分野:環境
プログラム目標:
○大気及び土壌の有害化学物質を浄化する技術を開発する。
○テーマ1では、有害化学物質の吸着材を天然の骨等の材料から製造するとともに、VOCを高効率で分解する新たな触媒を可視光応答型光触媒の技術を基に開発する。
○テーマ2では、これらの新材料を活用して、中小企業向けの大風量・低濃度のVOCを処理する装置を開発する。
○処理装置はセンサとWebを利用して稼動させ、個別の事業所だけではなく、地域としてVOCを削減するリサイクルシステムを確立する。
○これらの技術開発により、住宅と工場が共存しうる環境を形成するとともに、都民の健康を守り、企業に高付加価値をもたらす環境ビジネスを創生する。

プログラム推進根拠:東京都産業科学技術振興指針(平成16年2月策定)
東京都中小企業対策審議会答申(平成16年5月策定)
中核機関:地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター
コア研究室:東京都ナノテクノロジーセンター
自治体の担当部署:東京都産業労働局 商工部 創業支援課
企業化統括:地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター 理事長 井上 滉
代表研究者:慶応義塾大学 理工学部 教授 仙名 保

課題名:「次世代耐熱マグネシウム合金の基盤技術開発」
地域名:熊本県


(目的)

 熊本大学で開発された次世代耐熱マグネシウム合金という研究シーズをもとに、高機能性を発現するメカニズムの解明、及び、溶解、鋳造から表面処理技術に至る一貫した製造技術の開発を実施し、熊本地域に自動車産業をはじめとした次世代耐熱マグネシウム合金を活用した研究開発・産業拠点を形成することを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)次世代耐熱マグネシウム合金材料設計開発
 (2)次世代耐熱マグネシウム合金製造基盤技術開発

<事業の推進に関して>

 熊本大学で開発された次世代マグネシウム合金という研究シーズをもとに、熊本大学、熊本県工業技術センター及び近隣のマグネシウム合金関連企業、自動車関連企業が結集して研究開発を推進する連携体制が構築されている。それぞれの役割と目標も明確にされており、地域に貢献する新技術・新産業の創出が期待できる。また、燃費改善効果の大きいエンジンおよびその周辺部品への展開も期待され、環境問題解決の面からも意義は大きい。

<研究開発に関して>

 長周期積層構造形成による次世代耐熱マグネシウム合金は他にない独自性、優位性のある研究シ-ズである。参画メンバーには十分な実績があり、新規の長周期積層構造組織を制御する指導原理を確立し、高機能性を発現するメカニズムを解明することで、工業プロセスの構築が期待できる。また、溶解、鋳造、塑性加工等の要素技術についても課題及びそれに対する解決策が明確になっており、目標設定も妥当である。

<成果移転に関して>

 最適合金設計およびその最適製造プロセス技術の構築により、軽量、強度、耐熱等が必要な様々な産業分野への技術移転が期待できる。
基本特許は出願済であり、物特許、製法特許とも戦略的に出願されている。今後は周辺特許の出願についても戦略性が求められる。

<地域による支援に関して>

 加工技術センター、新事業支援・教育研修センター等の設置など、成果を利活用するための取り組みが具体的に計画されている。過去に半導体領域において産学官連携に熱心に取り組んだ実績からみても、人的、資金的両面からの支援が期待できる。

(提案内容)