研究領域「ナノ液体プロセス」の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現在の高度なIT社会はハイテク電子デバイスの進歩の賜物です。電子デバイスの製造過程では全ての技術パラメータは最適化されているように思われますが、電子デバイス産業をエネルギー効率、資源効率的な観点から見ると改善の余地が大いにあります。例えば高価なハイテク素材であるシリコンウェハーやレジスト材料の有効利用率は非常に低く、材料の不要部分を削って作るプロセス上、材料の多くが無駄になっています。現在の製造プロセスの発想から脱却し、液体化した材料を必要な場所に必要な量だけ吹き付けるという発想で電子デバイスの作製を行なうことで、高価、稀少、有害な材料の使用量や廃棄量を大幅に抑えることが可能になると期待されます。現在の多くの電子デバイスはナノメートルサイズのデバイスを作製する技術で製造されるため、液体化した材料をナノスケールで目的の箇所に配置する技術としてナノ液体プロセスを提案します。ナノ液体プロセスは集積回路や高密度メモリ等の電子デバイスの製造方法を根本から変えうる将来の基幹技術として期待され、製造プロセスの低環境負荷化、低エネルギー化や低コスト化を同時に実現することが可能と考えられます。 本研究領域では、微小液滴内での溶質の移動(輸送)の挙動や自己組織化能力に対する理解を深め、量子力学的なミクロの問題に還元して扱う新しい科学領域「ナノ輸送科学」を開拓します。また、得られた知見を基に液体の多様な能力を利用してナノサイズの電子デバイスを作製する技術基盤の確立を目指します。 具体的には、(1)溶質、溶媒と基板との間に働く分子間力、溶液と基板間の電荷移動、溶質の化学ポテンシャル、溶媒和力などの、ナノスケール領域では強く影響が現れる各種相互作用を制御するために、液体内での物質の微小輸送能力や自己組織化能力の理解を深めます。(2)ナノ液体プロセスで利用可能な各種の高次機能性液体の開発を目指します。特に、液体中に固体に類似した構造を持つ「疑似固体構造内包溶液」とでも言うべき高機能性液体を提案し、従来よりはるかに低温で半導体デバイス等のナノデバイス作成が可能な製膜技術の確立を目指します。(3)分子間力の作用範囲での溶媒中の溶質挙動を解明・制御し、微小液滴内で材料の堆積を制御する場「液体チャンバー」の内部で、溶質を自発的に基板上の狙った場所に堆積させるというボトムアッププロセスによる固体製膜の実現を目指します。(4) 上記の材料、プロセスをベースにして高性能なMOS-FETおよびその集積回路, 超高密度メモリ、分子素子などのナノデバイスの製造基盤の確立を目指します。(5)ナノデバイス研究ツールとして研究室レベルで扱うことが可能で、基板投入からデバイス作製、分析、電気特性分析までの機能を1台に備えた「デスクトップラボ装置」の開発を目指します。 本研究領域は、ナノ輸送科学という新領域を開拓し、高性能なナノデバイスを低エネルギー、省資源で製造する技術的な基礎を創成することを目指すもので、戦略目標「ナノデバイスやナノ材料の高効率製造及びナノスケール科学による製造技術の革新に関する基盤の構築」に資するものと期待されます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究総括 下田達也氏の略歴等 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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