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別紙2

委託開発の採択課題の内容


課題名 湿式抄紙製法による排ガス浄化装置
新技術の代表研究者 九州大学大学院農学研究院 助教授 北岡 卓也
委託企業 株式会社エフ・シー・シー
新技術の内容:
 本技術は、紙すき技術を応用した高効率二輪車用排ガス浄化装置である。
 近年の二輪車排ガス規制の強化は、燃焼効率向上のみでは対応しきれず、二輪車へも排ガス処理装置の搭載が望まれている。しかし、振動耐久など二輪車特有の要求から高価なメタルハニカムしか用いることが出来ず、一部高級車種への搭載に留まっていた。
 本技術のペーパー触媒によれば、製造が容易で且つ軽量であり、強度に優れ、さらにペーパー独自の空隙を浄化反応場として利用することにより触媒反応効率を高め、貴金属触媒使用量を大幅に減らすことが可能となり、低コスト・高効率な二輪車用排ガス浄化装置を提供できる。本技術により二輪車排ガス浄化装置の普及を進めることができ、環境への多大な貢献が期待される。

課題名 抗血栓治療におけるリアルタイム薬効モニタリングシステム
新技術の代表研究者 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 教授 丸山 征郎
委託企業 藤森工業株式会社
新技術の内容:
 本技術は、抗血栓療法に用いられる各種薬剤の効果をリアルタイムに観測する臨床検査システムである。近年、種々のターゲットを有する多くの抗血栓剤が開発されてきたが、より効果的な抗血栓療法のため、投与薬剤効果を適確に把握する分析的診断技術の開発が望まれている。
 本技術では、キャピラリー内に構築した模擬血管において形成される血栓を可視化するとともに、流路内圧力変化を測定することにより、それぞれの薬剤の効果を総合的に診断することができる。
 今後ますます多様化する薬剤及びそれらの併用療法に対し、リアルタイムにその効果を診断することで、血栓性疾患のオーダーメイド医療に寄与することが期待される。

課題名 減圧沸騰噴霧による気化供給装置
新技術の代表研究者 同志社大学工学部 教授 千田 二郎
委託企業 株式会社堀場製作所
新技術の内容:
 本技術は、次世代DRAMのNb2O5キャパシタ膜を量産規模で成膜できる気化供給装置である。DRAMのキャパシタは、誘電率が高いNb2O5膜に移行すると予測されている。
 本技術は、加圧した液状の原料を成膜室に供給し、成膜室内で減圧沸騰させ噴霧する方式を採用するとともに、原料を有機溶剤との混合溶液とし、さらに噴霧を微粒化させることで、これまで難しいとされた気化量の大幅な増加を実現し、従来の原料を加熱する方式では困難であったNb2O5薄膜の成膜を可能にする。

課題名 ヒト複合型2分岐糖鎖及び糖ペプチドの大量合成技術
新技術の代表研究者 横浜市立大学大学院国際総合科学研究科 準教授 梶原 康宏
委託企業 大塚化学株式会社
新技術の内容:
 本技術はヒト複合型2分岐糖鎖及び糖ペプチドの大量合成技術に関するものである。従来、糖鎖誘導体はその構造の複雑さと親水性の高さから分離精製が困難であり、これまで大量に調製することが困難であった。
 本技術は、糖鎖還元末端に残したアスパラギンに疎水性基を付与することにより、鶏卵黄から高純度で糖鎖誘導体の分離精製を大量に行うことを可能にした。本開発では、糖鎖を年間1kg調製が可能なパイロットプラントの導入を行う。また、糖鎖誘導体の糖鎖還元末端のアスパラギンを利用して化学合成による糖ペプチドの大量合成を目指す。本技術により、医療用タンパク質・ペプチドの糖鎖修飾や抗体医薬の糖鎖品質管理が容易となり、基礎研究や創薬研究(糖鎖創薬・診断薬)への利用が期待できる。

課題名 マイクロ波を利用した高品位活性炭の工業的連続製造技術
新技術の代表研究者 かがわ産業支援財団高温高圧流体技術研究所 研究参与 加藤 俊作
委託企業 株式会社カナック
新技術の内容:
 本技術は、高静電容量を持つ高品位活性炭の製造に関するものである。工業電子部品、自動車補助電源等に適用する電気二重層キャパシタ用活性炭には大容量化が切望されているが、従来の外部加熱のみの製造法では急速加熱が難しく、静電容量の向上には限界があった。
 本技術ではマイクロ波と外部加熱を併用したハイブリッド型反応炉により、炭素原料を内外から均一に急速加熱することが可能となり、活性炭内にナノサイズの細孔を均一に生成させて大容量化に必要な有効比表面積の大幅な増加と高密度化を実現できる。これにより、電子部品用を始め、ハイブリッドカー用などのキャパシタの小型化等に貢献することが期待される。