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(参考3)

新規採択開発課題の概要

機器開発プログラム(領域特定型)
「ナノレベルの物質構造・状態3次元可視化(機能素子・材料、及び細胞内物質・生体高分子)」:1件

開発課題名 チームリーダー・サブリーダー
氏名・所属機関・役職
開発概要
超1GHzNMRシステムの開発

【チームリーダー】
木吉 司
(独)物質・材料研究機構強磁場共用ステーション
ステーション長

【サブリーダー】
濱田 衞
(株)神戸製鋼所技術開発本部電子技術研究所
室長

NMR 装置の強磁場化を加速することで、従来困難であった生体高分子中の酸素、金属原子等の四極子核の計測が可能となり、新薬創製等幅広い分野での応用が期待されます。本開発では、これまでNMR磁石には使用が困難とされてきた酸化物系超伝導線材を計測技術の高度化を含めた磁場安定化システムの開発により適用可能とすることで、1 GHz を超える24 T NMRシステムを完成し、その有用性を実証します。

機器開発プログラム(領域特定型)
「ハードウェアによる計測限界を突破するためのコンピュータ融合型計測分析システム」:2件

開発課題名 チームリーダー・サブリーダー
氏名・所属機関・役職
開発概要
超音波計測連成解析による超高精度生体機能計測システム

【チームリーダー】
早瀬 敏幸
東北大学流体科学研究所
教授

【サブリーダー】
小杉 隆司
(株)アールテック
代表取締役

小動物を用いた心臓循環器系の先端研究において、超音波計測結果とスーパーコンピュータ解析結果の差異を計算にフィードバックする新たな計測連成解析手法を開発し、循環器系疾患の機序や治療法の解明に不可欠な血流の3次元構造や壁せん断応力などの血流情報の精度を飛躍的に向上させます。本計測技術開発により、循環系や癌の先端研究が大いに進展することが期待されます。
蛋白質解析用超高感度テラヘルツ波NMR装置

【チームリーダー】
藤原 敏道
大阪大学蛋白質研究所
助教授

【サブリーダー】
穴井 孝弘
日本電子(株)分析機器本部NM/ERグループ
グループ長

テラヘルツ波照射によって低温電子スピンの巨大な分極を利用して蛋白質の超高感度固体NMR スペクトルを得ます。この解析に、最近の構造プロテオミクス研究で充実してきた蛋白質NMRデータベースと、最新の計算機能力で可能になった多スピン系の量子力学計算を利用します。これにより、これまで単結晶X 線回折などでの構造決定がむずかしいアミロイド蛋白質や膜蛋白質複合体の解析を行います。

機器開発プログラム(領域非特定型):1件

開発課題名 チームリーダー・サブリーダー
氏名・所属機関・役職
開発概要
可搬型環境分析用アスベスト高感度X線回折装置の開発

【チームリーダー】
中村 利廣
明治大学理工学部
教授

【サブリーダー】
藤縄 剛
(株)リガク第一事業部戦略ビジネスユニット
ビジネスユニットマネージャー

現場において、アスベスト等の含有量を正確に分析できる装置のニーズが高くなっていますが、本開発では、0.1~0.3 質量%程度の極微量アスベストの検出を可能とし、しかも100V 電源と水道水による冷却で動作し、車載が可能で、さらに簡易な試料前処理でも分析できるX線回折装置の開発を行います。さらに、この測定に必要な標準物質及び試料前処理方法の開発も併せて行います。本開発により、ナノレベルの汚染物質等の定量へも波及が期待できます。

要素技術プログラム:8件

開発課題名 チームリーダー
氏名・所属機関・役職
開発概要
高効率回折・分光のための精密点集光結晶の実用化 中嶋 一雄
東北大学金属材料研究所
教授
本課題ではシリコン、ゲルマニウム結晶の高温塑性変形を利用した精密な高温加圧加工技術を開発し、それに最適化された光学系を設計することによってX線光学基幹要素としての点集光結晶レンズの劇的な性能向上を実証します。具体的にはこれまでの基礎研究から明らかになってきた結晶の高温加工・成長と高温変形原理に関する知見を発展させることにより、集光取込角が0.05sr(全反射コンフォカルミラーの1.5 桁上)の実現につながる点集光2次元集光結晶レンズの作成技術を確立します。
ガスクラスターSIMS基本技術の開発 持地 広造
兵庫県立大学大学院工学研究科
教授
数千個以上の気体原子で構成される巨大ガスクラスターイオンを一次イオンに利用し、照射損傷の極めて小さい二次イオン質量分析(SIMS)の基本技術を開発します。ガスクラスターイオンの構成原子数と加速電圧を制御することにより、構成原子あたりの運動エネルギーを1eV以下まで低下できるとともに、2次イオン生成率を従来の単原子イオン照射に比べて1~2 桁増大させることができます。これらの特長を利用して、有機物分子構造の非破壊計測や1原子層の分解能で深さ方向分析が可能な高性能クラスターSIMS の実現を目指します。
走査エレクトロスプレーによる分子イメージング 平岡 賢三
山梨大学クリーンエネルギー研究センター
教授
大気圧下、前処理なしの生体組織を走査プローブ顕微鏡観測下で直接局所質量分析する走査エレクトロスプレー分子イメージング装置を開発します。XYZ 軸ピエゾ素子駆動STM 探針を、Z方向駆動の振動数:数kHz、振幅:数10μm で上下振動させ、nm オーダー空間分解能で生体試料と接触させて、針先に試料分子を電場誘起効果により捕捉します。探針先端に捕捉した試料分子をプラズモン支援エレクトロスプレーによって脱離イオン化し、直交型飛行時間質量分析計を用いて質量分析します。この走査をXY 方向に掃引し、生体試料のnm 領域分子イメージング像を測定します。
高精度高分解能荷電粒子撮像素子の開発 圦本 尚義
北海道大学大学院理学研究院
教授
荷電粒子を高精度・高分解能で2次元検出する技術はイオン顕微鏡や電子顕微鏡において必要不可欠であり、また、質量分析、電子線分光・回折においても有用です。本開発では分光・投影した荷電粒子の二次元イメージを空間分解能10μmで検出できる半導体素子を開発します。この半導体検出器は二次電子放出の原理を利用し分解能あたり数10 万個分までの荷電粒子を電荷として蓄積します。この蓄積電荷を統計誤差の定量性で読み出す技術も確立します。
X線円形多層膜ラウエレンズの開発 篭島 靖
兵庫県立大学大学院物質理学研究科
教授
超精密成膜技術を用いて、高空間分解能かつ高回折効率のX線円形多層膜ラウエレンズを開発します。従来の電子ビームリソグラフィー法に基づくX線レンズの製作では、いずれの性能もほぼ限界に達しており、ナノメータスケールの非破壊構造観察を実現するには、新しい製作法の導入が不可欠です。10 nm 以下の空間分解能を有するX線円形多層膜ラウエレンズを開発し、究極の電磁波であるX線自由電子レーザーがもたらすX線画像科学における質的変革の一翼を担います。
単原子実用電子源の開発 大島 忠平
早稲田大学材料技術研究所
教授
従来の電界電子放出電子銃に比較して、2 桁以上の輝度をもち、2 桁以上の空間的可干渉性が向上した、実用に供する寿命をもつ単原子電子源を開発します。タングステン<111>表面にナノピラミッドを作成し、この先端原子から高指向性、高輝度の電子ビームを放出させます。高いビーム性能実現のため、電子源の取り付け精度を1桁向上させ、各種雑音(振動、電気、磁場)を低減します。
サブミリ分解能をもつ拡張型高速PETの要素開発 片岡 淳
東京工業大学大学院理工学研究科
助手
陽電子断層撮影(PET)はガンを早期に発見する最良の手段ですが、装置の大型化と高コストが広い普及を妨げています。本開発では、光増幅フォトダイオード(APD)を基調とした「拡張型PET」の要素技術を確立します。優れた光感度をもつAPD を64ch ないしは256ch にハイブリッド配列化し、新開発の専用LSI と一体化することで、今までにない小型かつ高感度の撮像素子が作られます。PET の理論限界に匹敵するサブミリ程度の分解能に迫ることが可能となり、小さな腫瘍の発見や小動物の脳内代謝カメラとしても応用が期待できます。
膜に関連するタンパク質の配列・構造粗視化解析技術 美宅 成樹
名古屋大学大学院工学研究科
教授
膜に関連するタンパク質の構造・分子認識を推定するためのソフトウェアシステム、および分子間相互作用の情報を与えるフォースカーブ解析手法を開発します。これは任意のアミノ酸配列に対する膜タンパク質高精度構造・分子認識予測システムの大事な要素技術となります。本技術要素のポイントは、原子分解能の見方が最も良いという常識を覆し、配列や構造を粗視化することで膜タンパク質の構造形成や分子認識の本質をとらえるという新しい見方にあります。
合計:12件(「機器開発プログラム」4件、「要素技術プログラム」8件)