【用語説明】
 
(※1) 尿毒症物質
 強い毒性を示す尿毒症物質は正常であれば腎臓から体外に排出されるが、腎不全時はこの排出が低下するため体内に蓄積し尿毒症を引き起こす。そのため腎不全時には透析によりこれらの物質を血液中から取り除く必要がある。
 しかしながら現在一般的に行われている血液透析は血液中の物質の分子サイズで単純に分けているため、透析では完全に除去できない尿毒症物質が体内に蓄積してしまい、各種合併症を引き起こす。そのために尿毒症物質を特異的に排出する新たなシステムの構築が望まれている。
 
(※2) 輸送蛋白質
 輸送蛋白質は細胞膜に発現し、生理活性物質や薬物、毒物などの細胞内への取込みあるいは細胞外への排出という機能を有する。全ての細胞は細胞膜に覆われているため、物質の細胞内外への移動は、細胞膜に発現する輸送蛋白質によって制御されている。
 
(※3) 多剤耐性遺伝子(MDR1)
 細胞内に入った異物を細胞外へ排出する機能を有する輸送蛋白質の一つ。この輸送蛋白質は生体内の異物を生体外へ出すため生体の防御機構としての役割を担っている。また、この輸送蛋白質は癌細胞に対する様々な抗癌剤の効き目を悪くする原因遺伝子としても知られているため「多剤耐性遺伝子」とも言われている。
 
(※4) オーダーメイド医療
 個々人の体質を見極め、それにあわせた最適な治療を行うことをオーダーメイド医療という。その体質の見極め方法として現在盛んに行われているのが、遺伝子の個人差を調べる方法である。
 
(※5) 腎臓移行性
 薬物を作用させたい臓器のみに移行させることは、薬物としての効果を上げるのみならず、他の臓器に影響を与えないため副作用を軽減させることが可能である。そのため腎臓移行性の高い薬物は腎炎などの腎臓を標的とした薬物の開発において重要である。
 また、腎臓は肝臓と並び薬物の排泄を担う重要な臓器であり、薬物が体内に蓄積して副作用を発現しないようにしている。腎臓移行性の高い薬物は主として腎臓から尿中に排泄されるため肝機能が低下した症例においても薬物の体内蓄積を心配することなく使用できる。
 
(※6) 抗糸球体基底膜抗体
 糸球体基底膜は腎臓が血液を濾過する濾過膜である。この糸球体基底膜を認識し、結合するのが抗糸球体基底膜抗体である。この抗体を動物に投与すると抗体は糸球体基底膜に結合し、その後炎症反応を引き起こして糸球体腎炎、腎不全へと移行する。
 

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