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科学技術振興機構報 第294号

平成18年5月23日

東京都千代田区四番町5-3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL https://www.jst.go.jp

原子構造・電子構造レベルでの超薄片化加工を可能とするベンチャー企業設立

(JSTプレベンチャー制度の研究開発成果を事業展開)

 JST(理事長 沖村憲樹)は、平成11年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスに結びつけていくために、起業化に向けた研究開発を行うプレベンチャー事業を実施してきました。
 この度、平成14年度より開始した研究開発課題「電子顕微鏡観察用無損傷レーザー精密研磨装置」の研究開発チーム(リーダー:市野瀬英喜 北海道大学エネルギー変換マテリアル研究センター 教授、サブリーダー:梅枝勲)のメンバーが出資して、ベンチャー企業  有限会社ナノケンマ (代表取締役:梅枝勲、本社:東京都西多摩郡、資本金:400万円)を平成18年4月4日に設立しました。
 近年、電子デバイスなどはミニマム化が求められ、機能材料から構造材料に至るまで、様々な部分の原子構造・電子構造をナノメートル*1単位で観察する必要があります。
 一方、電子顕微鏡の性能は日々向上し、今では分解能が0.1ナノメートル超のナノサイズ規模にまで達し、ミニマム化を追い求める電子デバイス開発などへの利用が期待されます。この微少な領域を電子顕微鏡で観察するためには、観察用試料をナノメートル単位の超薄片化加工する必要があります。しかしながら、現在、試料の薄片化はイオン研磨による方法が広く利用されており、この方法ではイオン照射により試料表面が損傷し、0.1ナノメートル超レベルでの観察・解析は困難となります。
 この問題を解決するために、本研究開発チームは紫外領域レーザーを試料に照射して原子同士を剥離し、試料表面から原子単位で一面ずつ剥ぎ取るという超精密加工を可能とする薄片化処理装置の開発に成功しました。
 今後、イオン研磨装置を利用している既存ユーザーである大学・企業など研究機関に、薄片化処理装置の導入を促すとともに、汎用的に利用されているイオン研磨装置で素研磨を行い、ナノメートル単位の研磨で仕上げ研磨を行う本装置とを組み合わせた複合機能を有する装置の開発や、さまざまな種類の試料を薄片化できる装置の開発も進め、平成20年度には年間2億円の売上を目指します。今回の有限会社ナノケンマの設立で当事業および大学発ベンチャー創出推進の制度によって設立したベンチャー企業数は45社になりました。
*1 ナノメートル:10億分の1メートル
■ 製品例・実施例
■ 企業概要

<本件お問い合わせ先>

独立行政法人 科学技術振興機構
産学連携事業部 技術展開部 新規事業創出課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
米谷雅之(ヨネヤ マサユキ)
TEL: 03-5214-0016 FAX: 03-5214-0017

有限会社 ナノケンマ
代表取締役 梅枝 勲(ウメエダ イサオ)
〒190-0100 東京都西多摩郡日の出町平井1102-19
TEL: 042-597-4356 FAX: 042-597-4356