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<用語の説明>

(注1)受容体型チロシンキナーゼ
 チロシンキナーゼとは、特定のアミノ酸『チロシン』にリン酸を付加する機能を持った酵素のことです。受容体型チロシンキナーゼは、細胞外領域、膜貫通ドメイン、酵素活性を有する細胞内領域から構成され、細胞外領域にある特定の物質(リガンド)が結合することによりリン酸化活性の調節を受けると考えられています。なお、チロシンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つです。

(注2)軸索
 軸索とは、神経細胞から1本だけ突起状に延びて、他の神経細胞の樹状突起とシナプスという特殊なつなぎ目を形成することによって、神経細胞の情報伝達を担っている部分です。シナプスでの情報伝達においては、軸索は出力側、樹状突起は入力側となります。

(注3)網膜視蓋投射系
 網膜にある神経節細胞から脳内の視中枢(視蓋)にある神経細胞への視神経投射系のことです。網膜上に投影された視覚情報は、視細胞により電気信号に変換されます。この信号は網膜内で処理された後、視神経を通って脳内の視覚中枢へと伝達されます。このとき、網膜上に投影された像の情報は二次元的な形を保った状態で中枢へ伝達されます。これを可能にしているのが網膜神経節細胞から視蓋へのトポグラフィックな(領域特異的な)神経投射です。

(注4)チロシンホスファターゼ
 チロシンホスファターゼとは、特定のアミノ酸『チロシン』に付加されたリン酸を除去する機能を持った酵素のことです。チロシンホスファターゼには、細胞外領域、膜貫通ドメイン、酵素活性を有する細胞内領域から構成される受容体型以外に、酵素活性を有する細胞内領域のみから構成される細胞質型が存在します。受容体型チロシンホスファターゼは、受容体型チロシンキナーゼと同じく細胞外領域にある特定の物質(リガンド)が結合することにより、リン酸除去活性の調節を受けると考えられています。

(注5)優位抑制型分子
 正常の分子に対して優位(ドミナント)に働いて、正常分子の作用を抑制する(ネガティブな効果を持つ)変異分子のことです。Ptproの優位抑制型分子を網膜に発現させると、もともと網膜に発現していた(内在性の)野生型Ptproの機能が抑制されるので、Ptproの機能を抑制した場合の神経投射の変化を解析できます。

(注6)RNAi
 RNA interfrenceの略で、細胞に導入された二本鎖のRNAが、それと同じ配列を持つ標的遺伝子のmRNAと結合・破壊し、mRNAからのタンパク質合成を抑制する現象のことです。この方法は、近年、遺伝子の機能解析に有用な方法として注目されています。