JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第278号 > 用語解説

【用語解説】

(注1)光子:
量子論により光(電磁波)の粒子的側面を説明するために導入された、光の最小エネルギー単位。光は、波動としての性質とともに粒子としての性質をもつと考えられている。そのため、光の弱い極限では光を一粒ずつ数えることができる。光子1個のエネルギーは波長に反比例する。したがって、可視光・近赤外光などの"光"に比べて、"電波"は光子のエネルギーが圧倒的に小さく、光子検出は極めて困難である。テラヘルツ波は"光"と"電波"の狭間にあるので、本研究の成果により、人類史上で最も電波に近い領域で光子計測研究を可能にした。
(注2)量子ドット:
半導体や金属において、微細加工あるいは結晶成長により、微小領域に電子を閉じ込めた電子系。人工原子とも呼ばれる。
(注3)単一電子トランジスタ:
量子の世界に特有のトンネル効果を利用して、電子を1個ずつ制御するトランジスタ。電子1個分の微小な電荷で電流を制御できる特徴をもつ。
(注4)量子ホール効果:
半導体界面に形成される2次元電子層に低温で強い磁場を加えると、電流方向の抵抗がゼロになり、ホール抵抗が量子化する現象。ここで、ホール抵抗とは、磁場によるローレンツ力の影響で生じる、電流に対して垂直方向の抵抗のこと。
(注5)ソリッドイマージョンレンズ:
試料に密接させて使用する半球状の対物レンズ。通常の光学顕微鏡の分解能は波長の大きさで決まる(回折限界)が、屈折率の高い媒質中では有効的に波長は屈折率分の1に縮小されるので高分解能が実現する。
(注6)サイクロトロン運動:
電子が磁場によりローレンツ力を受けて起こす円運動。その軌道半径は磁場に反比例し(サイクロトロン半径)、周波数は磁場に比例する(サイクロトロン振動)。この電子の円運動によって引き起こされる電磁波がサイクロトロン放射(発光)。ちなみに、電子の速度が光の速度に近づくと放射特性が変わり、シンクロトロン放射と呼ばれる。
(注7)近接場光技術:
光には伝播光以外に、物に光を当てると、その物の周辺で局所的な近接場光が生じる。これを利用して回折限界をはるかに超える分解能を実現する光計測技術。この技術により、最近、波長100μmのテラヘルツ波でもナノメートルスケールの空間分解能が得られている。
(平成28年11月14日 JST 広報課追記)テラヘルツ波(周波数1012ヘルツの電磁波。波長3μm~1mm):
本プレスリリースでは、「テラヘルツ波」を「周波数1012ヘルツの電磁波。波長3μm~1mm」としております。より短波長または長波長の波を「テラヘルツ波」と呼んだり、あるいは、もっと狭い範囲を指すこともあるようです。現時点で、テラヘルツ波の範囲について明確な定義はないようです。