JST(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業 委託開発の開発課題「超音波二波計測による骨強度計測システム」の開発結果を、このほど成功と認定しました。本開発課題は、同志社大学名誉教授大谷 隆彦氏らの研究成果を基に、平成13年3月から平成17年10月にかけて応用電機株式会社(代表取締役 茶屋誠一、本社 京都府城陽市、資本金 5,000万円、電話:0774-55-1101)に委託して、企業化開発(開発費310百万円)を進めていたものです。
国内では、人口の高齢化を反映して骨粗しょう症患者が急増しており、早期診断の普及・向上が望まれています。現在、骨粗しょう症の診断にはX線方式及び超音波方式の骨密度計測装置が使用されています。X線方式は骨密度の精密計測ができますが、骨強度(弾性定数)の情報が得られない弱点があり、放射線被曝の心配があります。超音波方式は簡便・安全ですが、測定される音速や減衰率と骨密度との相関理由を裏付ける理論的研究が不十分で、医療分野で信頼度が低い欠点がありました。このため、データの信頼性が高い超音波方式の骨密度診断装置の開発が求められていました。
本新技術は、超音波送受信プローブを測定部位に合わせて、適切な箇所に設定すれば、人体を通過する超音波は、骨粗しょう症に関係する海綿骨の骨質を表す高速波と、骨髄特性を表す低速波の二波に分離できることを利用して、高速波と低速波を区別し、計測・演算処理して、骨弾性定数や骨密度を取得するシステムを開発したものです。本計測シスムは移動型で、手首近くの撓骨部*1)を一対のプローブで挟み、機械的走査を行い、2次元画像情報から、計測可能箇所を自動選択して、信頼性の高い計測を行うものです。
本計測シテムは臨床試験において、安全性と、末梢骨用X線CT方式の骨密度計測装置に匹敵する有用性が確認されました。今後、薬事法に基づく承認を受けて、2年以内の販売を目指します。
本新技術の背景、内容、効果の詳細は次のとおりです。
(背景) 安全で、データの信頼度が高い超音波骨密度計測装置が求められていました。
人口の高齢化に伴い、骨粗しょう症患者が急増しており、2015年には1000万人を超えるとの予測もあります。このため、骨粗しょう症の早期診断技術の向上・普及が望まれています。現在、骨粗しょう症の診断に用いられている計測装置の特徴は次のとおりです。
(内容) 海綿骨部を通過する超音波が、高速波と低速波に分離する現象を利用して、高速波と低速波を弁別計測し、骨弾性定数や骨密度を取得するシステムを開発しました。
従来の超音波骨密度計測装置は、海綿骨や皮質骨、及び周辺軟組織を通過する超音波を全体として計測しているために、骨粗しょう症に関係する海綿骨のみを計測することが不可能でした。
本新技術では、超音波プローブを測定部位に合わせて、適切な箇所に設定すれば、通過する超音波は、海綿骨の骨質を表す高速波と、骨髄特性を表す低速波の二波に分離できることを利用して、高速波と低速波を弁別し、計測・演算処理して骨弾性定数や骨密度を得るシステムを考案しました(図1)。開発した計測システムは、移動型で、手首の撓骨遠位端*4)を超音波送受信プローブで挟み、機械的走査を行い、2次元画像情報を提供し、自動選択した計測可能箇所で、精密計測を行うものです(図2)。
(効果) 安全な骨密度計測装置を提供し、骨粗しょう症の早期診断の普及・向上に貢献できることが期待されます。
本新技術により開発された超音波二波計測方式の骨強度計測システムは、臨床試験において、安全性と、X線方式の骨密度計測装置(pQCT)に匹敵する有用性が確認されました。すなわち、


【用語解説】
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