資料4

新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要


○個人型研究(さきがけ)

戦略目標「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」
4 研究領域:「生命現象と計測分析」
研究総括:森島 績(京都大学 名誉教授/立命館大学理工学部 客員教授)

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
秋山 修志 独立行政法人
理化学研究所
播磨研究所 基礎科学特別研究員 時間と共に離合集散を繰り返す分子機械のX線小角散乱・動的構造解析 生体内で高度な化学反応を担うのは、単独の蛋白質ではなく、むしろ蛋白質複合体から成る分子機械です。分子機械の中には、部品(蛋白質やドメイン)の離合集散を伴うものが多く存在しますが、それらに1分子可視化技術を応用するのは容易でなく、研究手段は未整備な状況にあります。本研究は、X線小角散乱技術が離合集散系の可視化技術として大きな可能性を秘めていることを提案し、それを生物時計の研究を通じて実証するものです。
石本 哲也 富山医科薬科大学 大学院医学系研究科 助手 記憶形成の脳内イメージング 記憶現象の分子メカニズムが、培養細胞レベルで明らかになってきました。しかし、個体レベルでの記憶形成との連関は直接証明されていません。本研究では、複数の最新技術を融合することにより、生きたマウスの脳内での、特定のタンパク質の挙動を計測する技術の確立を目指します。この研究によって、記憶形成にかかわるタンパク質の挙動と、個体レベルでの記憶形成の連関を直接証明するとともに、病因解析技術などへの応用の可能性を探ります。
上杉 志成 京都大学 化学研究所 教授 生命現象分析のための小分子転写因子創成 老化や癌化といった多くの生命現象は遺伝子をスイッチオンにしたりオフにすることで調節されています。そのスイッチの役割をしているのが、転写因子と呼ばれる蛋白質です。本研究の目標は、転写因子を有機化合物で化学合成し、生物学の道具とすることです。細胞に振りかけたり、動物に飲ませるだけで遺伝子を自由自在に制御する有機化合物を創ります。本研究は小分子化合物の夢と限界に挑戦するものであり、革新技術に繋がることが期待されます。
小椋 俊彦 独立行政法人
産業技術総合研究所
脳神経情報研究部門 研究員 蛋白質電顕画像を用いた自動 in silico 擬似結晶構造解析法の開発 電子顕微鏡画像から蛋白質の3次元構造を解析する単粒子構造解析法は、結晶サンプルを必要としない汎用性の高い方法です。しかし、多くの処理に手作業が介在するため、2年以上の解析期間が必要であります。本研究では、これまでの処理スキームから脱却した新たな解析アルゴリズムを開発することで、手作業を排除した完全な自動化の達成を目標とします。これにより、1ヶ月以内での蛋白質構造解析を可能とし、様々な蛋白質の構造や複合体構造の解明を目指します。
金子 智行 東京大学 大学院
総合文化研究科
助手 オンチップ多電極刺激計測系による細胞ネットワークの構成的理解 オンチップ多電極刺激計測系により、従来の技術では理解が難しかった細胞集団が持つ集団化効果(コミュニティ・エフェクト)を明らかにします。そのために、独自に開発したアガロースマイクロチャンバーと多電極刺激計測システムを組み合わせ、「構成的」に構築した心筋拍動細胞集団ネットワークが環境との相互作用によって、拍動周期情報の獲得・保持・変化・消失する機構を解明します。
喜多村 和郎 University College
London
- Senior Research Fellow 神経活動のin vivo高速イメージングと光操作 生きた動物の脳で活動する神経細胞の様子を、高速で観察することのできる顕微鏡システムの開発を行います。2光子励起顕微鏡の走査速度を高めることで、従来法では見ることのできなかった、単一神経細胞内や神経細胞ネットワークの活動を高時間空間分解能で観察することを可能にします。さらに、光により生きた脳内の神経細胞を刺激する方法を開発します。これらにより、脳における神経情報処理の包括的理解を目指します。
末田 慎二 九州工業大学 情報工学部 助手 2段階ビオチン化反応を利用したタンパク質解析 生体内でタンパク質の多くは互いに相互作用し複合体として存在していますが、このようなタンパク質間の相互作用を個別に効率よく解析し、さらに目的の複合体を簡便に精製する手法はまだ開発されていません。本研究では反応特異性の異なる2種類のビオチン固定化酵素並びにそれらの認識配列を利用して、2段階的に目的のタンパク質にビオチンを固定化し、簡便な相互作用解析ならびに複合体精製を行います。
楯 真一 技術研究組合
生物分子工学研究所
機能制御研究部 部長 超高分子量蛋白質の分子形態変化を観測するNMR技術 高分子量蛋白質の分子形態変化を定量的に解析するNMR技術を確立します。ドメイン再配向、サブユニット間配向変化を伴う分子形態変化による精緻な生体内反応制御機構を、原子レベルで解明する計測技術を創出します。ダイナミックに分子形態を変えて、細胞内反応を制御する蛋白質の実体を原子レベルで明らかにすることによって、静的な分子構造を対象とする構造生物学を超えた、新たな生命現象理解に向けた蛋白質構造研究のフェーズを切り開きます。
谷 正彦 大阪大学 レーザーエネルギー学
研究センター
助教授 生体分子計測用THz帯CARS分光イメージング装置の開発 本研究では、タンパク質などの生体分子のテラヘルツ領域の分子動力学を探るため、フェムト秒レーザーの線形チャープ光を用いた新しいテラヘルツ帯のCARS分光法を開発します。さらに生細胞の制御技術を開発し、制御状態の生細胞のTHz-CARSによる顕微分光イメージングを目指します。
寺田 純雄 東京大学 大学院医学系研究科 講師 細胞内生体分子間ネットワークのリアルタイム検出法の開発と細胞生物学的応用の検討 細胞内における生体分子群の会合や分離を観測できる良い実験系の開発を目指します。細胞内分子間相互作用検出法として有用な蛍光相互相関分光法を基準として、これと同等以上の性能が期待できる“蛍光信号強度時系列解析測光法”の開発を行い、その細胞生物学的応用を検討します。従来、遺伝学的手法によってしか確認できなかった、生体内のシグナルネットワークの制御関係を、直接可視化する基礎技術の確立を目指します。
中西 淳 早稲田大学 先端科学・健康医療
融合研究機構
助手 時空間を制限した細胞内シグナルの発生とその計測 ケージド蛋白質は、光照射によって除去できる官能基によって生理活性が眠らされている機能性蛋白質です。本研究では、広く一般化可能なケージド蛋白質の合成原理を開発します。この原理に基づいて合成したケージド蛋白質を細胞内に導入し、光照射を制御することで、人為的に細胞内の任意の位置・タイミングで活性蛋白質を発生させます。これに対する細胞内分子の挙動を顕微鏡で観察し、細胞内生体分子ネットワークの理解を目指します。
松崎 政紀 自然科学研究機構 生理学研究所 助手 広狭域2重2光子励起顕微鏡による神経回路網の計測 脳機能は、多数の神経細胞とその入出力部位である多数のシナプスの協調によって支えられています。この神経回路網の配線と結合様式を明らかにするために、2つの近赤外超短パルスレーザーを独立した光路によって制御する、新しい広狭域2重2光子励起顕微鏡を開発します。ケイジド化合物の活性化と蛍光分子の可視化によって、広域にわたる細胞群とそのシナプス結合との連関を見出し、神経回路網の基本作動原理の解明を目指します。