戦略的創造研究推進事業(公募型研究)における平成17年度
新規採択研究代表者・研究者及び研究課題の決定について


○チーム型研究(CREST)

戦略目標「通信・演算情報量の爆発的増大に備える超低消費電力技術の創出」
研究領域:「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」

氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名
黒田 忠広 慶應義塾大学 理工学部 教授 高性能・超低電力短距離ワイヤレス可動情報システムの創出
小林 光 大阪大学 産業科学研究所 教授 極限ゲート構造によるシステムディスプレイの超低消費電力化
佐藤 健一 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 超低消費電力光ルーティングネットワーク構成技術
高田 広章 名古屋大学 大学院情報科学研究科 教授 ソフトウェアとハードウェアの協調による組込みシステムの消費エネルギー最適化

五十音順に掲載

総評:研究総括 南谷 崇(東京大学先端科学技術研究センター 教授)

 この研究領域は、情報通信システム・ネットワークにおける爆発的な通信・計算量の増大に備えて、デバイス、回路、VLSI、アーキテクチャ、システム・ソフトウェア、アルゴリズム、ネットワークプロトコル、応用・サービスなどの各システム階層における個別要素技術の飛躍的革新だけではなく、それらの階層統合的なシステム管理、制御によって消費電力当たりの処理性能を100倍から1000倍に向上させる超低消費電力技術を確立する、という戦略目標達成を目指しています。
 具体的には、適応的エネルギー管理、動的再構成アーキテクチャ、省電力ネットワークアーキテクチャ、省電力アルゴリズム、並列処理言語・コンパイラ技術等のシステム要素技術で飛躍的な低消費電力化を実現するとともに各階層の連携、統合的管理によってシステムの超低消費電力化にブレークスルーをもたらす研究、また抜本的な超低消費電力化を可能にする新しい原理のハードウェアおよびソフトウェア基盤技術創出を目指す研究を選考の対象としました。
 初年度に当たる今回の応募は26件ありました。9名の領域アドバイザーとともに書類審査を行なって、まず11件を選択し、面接審査によって最終的には4件の提案を採択しました。採択テーマは、無線通信による可動情報システムの超低消費電力化、光ルーティングネットワークの超低消費電力化、新原理の薄膜トランジスタによるシステムディスプレイの超低消費電力化、ソフトウェア/ハードウェア協調による組込みシステムの超低消費電力化であり、領域としてバランスの良い構成になりました。いずれも基礎となる技術の裏付けがあり、アイデアの独創性とチーム構成のポテンシャルが高く、目標達成へのアプローチが明確な研究提案です。
 限られた予算枠の中で公平かつ厳正な選考を行った結果として、残念ながら今回採択に至らなかった提案の中にも、独創的かつポテンシャルが高く、本領域への貢献が期待できる研究構想が多くありました。一方で、目標達成への道筋が不明確なもの、基礎となる技術の信頼性や有効性に疑問が残るものなど、情報システムの超低消費電力化へ向けた本領域の研究として推進するには不十分な提案もいくつかありました。
 今後は、今年度と同様の方針で本領域の掲げる数値目標達成に貢献できる提案を求めますが、特に、情報システムの階層統合的なアプローチによって既存技術の限界を打破する研究提案を期待します。