科学技術振興機構報 第148号

平成17年 2月 2日

東京都千代田区四番町5-3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

小型オールアルミ化を可能としたエンジンシリンダコーティング技術を開発

-摩擦熱を利用した表面改質・接合装置の製造・販売を行う大学発ベンチャー企業設立-

 JST(理事長:沖村憲樹)では、平成11年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスに結びつけていくための起業化に向けた研究開発を行うプレベンチャー事業を実施してきました。
 この度、平成13年度より開始した研究開発課題「エンジンシリンダコーティング」の研究開発チーム(リーダー:篠田剛 名古屋大学大学院工学研究科 教授、サブリーダー:村上秀樹)のメンバーが出資して、ベンチャー企業 有限会社サーモフォーミングテクノロジー(取締役:村上秀樹、本社:愛知県豊田市、資本金:300万円)を平成17年1月21日に設立しました。
 地球環境問題は社会的にも最重要課題として取り上げられ、特に環境と経済の両立を実現する新技術の展開が要求されています。自動車関連業界では部品の軽量化、リサイクル性の向上等による地球環境保護対策としてアルミ化が進み、エンジンも急速に鋳鉄からアルミへと材料置換が始まっていますが、自動車のアルミエンジンの95%程度はエンジンシリンダに鋳鉄ライナー(シリンダの摩耗を防ぐために内壁部に挿入された鋳鉄製の部品)を採用しています。鋳鉄ライナーは、エンジンの小型軽量化、燃費改善を含むエンジン性能向上、材料のリサイクル等の観点からは十分とは言えませんが、経済性の観点からこれに代わる技術がありませんでした。
 本チームは、この代替技術として、従来とは全く異なる発想で摩擦熱を利用して、エンジンシリンダに適用する表面改質技術の開発を進めてきました。耐摩耗性に優れた硬質材料を摩擦熱で塑性流動させながらシリンダ内面に圧着させ、硬質膜を成形するもので、エンジンの性能向上のみならず、鋳鉄ライナーを不用にすることで、薄型になりエンジンの小型化が図られ、オールアルミ化によるリサイクル性の向上を実現する事が可能になりました。この技術はシリンダのみならず、メタル軸受け等の分野でも用途が見込まれ市場性は大きいものがあります。
 同社はこの表面改質技術及び改質装置の製造販売を通して地球環境改善に貢献できるエンジニアリング会社として認知度を高める事を当面の課題としますが、同時に改質材の供給・販売、金属成形分野でのコンサルティング等を行い、この市場で5年後に5億円の売上を目指します。

 今回の有限会社サーモフォーミングテクノロジー設立により、当事業によって設立したベンチャー企業は27社となりました。
■企業概要
■事業形態
■コーティングプロセスの原理
■製品例

<問い合わせ先>

独立行政法人 科学技術振興機構
企業化開発事業本部 技術展開部 新規事業創出室
斉藤隆行(さいとう たかゆき)
TEL:03-5214-0016