別紙1

EIG CONCERT-Japan「持続可能な社会のためのスマートな水管理」令和元年度新規課題一覧

課題名
(英語略称)
各国研究代表者・
所属機関・役職
課題概要
膜処理の課題を解決して都市における合理的で高効率な水管理の実現へ(Real Method) 木村 克輝
北海道大学 教授(日本)

膜処理では膜目詰まり(ファウリング)や微量汚染物質(低分子量の難分解性有機化合物)への対処が必要となる場合に大きなエネルギーがかかることが問題となっており、広範な普及の妨げとなっている。本研究では国際的に研究を先導してきた4グループ(膜ファウリング物質分析(日本)、微量汚染物質の膜処理プロセス内挙動(ドイツ)、新材料を用いた膜製造(トルコ)、水質および材料設計に関わる先進的データ分析(フランス))がそれぞれの強みをシームレスに共有して膜ファウリングと微量汚染物質の問題を解決することを目指す。

既往の関連研究では試験条件が局地的であり、成果の適用性が限定的であった。本研究で提示する新方法・新材料は研究グループ間で共有し、性能を日本と欧州双方で検証した後に国際的適用性が高い成果として発表する。

アンドレア・シェーファー
カールスルーエ工科大学 教授(ドイツ)
ベノイット・テシュネ
ポアチエ大学 准教授(フランス)
イスマイル・コユンジュ
イスタンブール工科大学 教授(トルコ)
セラミック膜ろ過による持続可能な水再生技術(SuWaCer) 中田 典秀
京都大学 講師(日本)

物理・化学的強度の高いセラミック膜ろ過により、都市域で安定供給される下水処理水を再生処理し、持続的な水再生、再利用を目指す。河川流域に発達した都市においては、上流で放流された下水処理水が下流で非意図的に再利用され、さらに、再利用された水が沿岸域へと流れている。昨今、微生物汚染や遺伝毒性の他、(マイクロ)プラスチックの流出が世界的な懸念事項となっている。下水処理場は、汚染物質の流出抑制の役割を担っているものの、上記のような汚染物質の全てを処理対象とはしていない。

このような背景から、本研究では、日本と欧州の研究チームによる国際連携により、長寿命、高強度のセラミック膜による安定的、持続的な下水処理水の高度処理を実現する。

トルコ側がセラミック膜の開発、日本側がセラミック膜の運転・処理性能評価、スロバキア側が毒性試験を担当し、直接連携することによる包括的な研究成果より、直接的にも間接的にも都市部で使用される水の源水となり得る下水処理水の高度処理が可能になり、潜在するリスクの低減にも貢献できるものと考えられる。

サイダ=ゼイネプ・コユンジュ
マーマラ研究センター 主席研究員(トルコ)
ドメニコ・パンゴロ
スロバキア科学アカデミー グループリーダー(スロバキア)
攪乱生態系の保水力を回復させる土壌エコテクノロジー(Soil Water) 藤井 一至
森林研究・整備機構 主任研究員(日本)

攪乱を受けた森林流域の保水力および水質を回復するため、土壌有機物量と構造に着目した低コストな土壌保水力の回復技術を開発する。欧州側の研究代表者らが発案したミミズ添加による土壌修復技術と保水力回復(土壌団粒発達)に最適な植林樹種の選抜を組み合わせることで、流域の保水力を最大化できるエコテクノロジーの有効性を検証する。

異なる生態環境を持つ地域(例えば東南アジア)への技術移転を可能にするため、欧州、インドネシアの石炭採掘跡地、日本の攪乱生態系において植林樹種、土壌条件(pH、粘土含量)と保水性、河川水質のデータベース化を行い、流域の保水性(土壌団粒発達)を最大化する植林樹種、土壌動物(ミミズ、シロアリ)の導入を組み合わせた土壌修復エコテクノロジーのガイドラインを策定する。

また、小水力発電など他の技術とコスト・ベネフィットを比較することで、途上国に技術移転する際の方法論を確立する。

ヤン・フロウズ
チェコ科学アカデミー生物学センター 主任研究員(チェコ)
ピーター・スルダ
スロバキア農業大学 教授(スロバキア)
ワーナー・ジャーウィン
ブランデンブルク工科大学 教授(ドイツ)
スマートシティにおける水再利用のための組織的意思決定フレームワーク
(SMART-WaterDomain)
福士 謙介
国連大学サステイナビリティ高等研究所 アカデミック・プログラム・オフィサー(日本)

複数の経済活動における排水の再生について技術的実現可能性、政策的制約、社会受容性および持続可能性(経済的、社会的、環境的)の観点から仮定を立て実証する。また、企業における水の再利用に関する要求と、大学研究の間のギャップを各国で明確にし、水のスマートな活用に関して、潜在的、経済的利点を評価し、その活用に関する障害を明らかにする。

工業用/農業用バリューチェーンにおいて再利用水の利用を促進することで水の総合的な需要を減らし、世界の人口動態の変化や経済状況を反映して、スマートな水の配分を行い環境のレジリエンスを高めるための技術活用プラットフォームを構築する。

セレーナ・カウチ
国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所 シニア・リサーチ・アソシエート(ドイツ)
ヴィースラフ・フィアルキエヴィッツ
ヴロツワフ大学 研究者(ポーランド)
アレッシュ・ファルダ
チェック・グローブ研究所 理事(チェコ)
クルヴァンヴァ・タチアーナ
スロバキア科学アカデミー 教授(スロバキア)
ニヨール・カズラウスキーノ
リトアニア自然研究センター 研究員(リトアニア)
集落規模の持続的水マネジメントを可能にする革新的水処理技術の提案と実証(InLedapp) 小熊 久美子
東京大学 准教授(日本)

小規模な水処理施設で求められる技術は、大規模施設向け技術のミニチュア版とは限らないが、小規模施設における有効性や持続可能性という観点で水処理技術を検証した事例は乏しい。そこで、UV-LEDによる紫外線消毒を中心に据えたトータルシステムを提案し、集落水道などの小規模な水処理施設で実証試験を行う。

各国の強みとして、日本はUV-LED水処理装置の研究開発と実証の分野で世界をリードする実績、ドイツは欧州を包括する装置認証機関としての国際的認知度と装置バリデーション(性能評価)の実績、チェコは細胞を用いた水の毒性研究の実績がある。これら各国の強みを相補的に生かし、水処理技術の社会実装に必須となる基盤的知見、すなわち「中長期的実証データ」「装置性能評価方法の標準化」「細胞毒性から見た処理水の安全性」を明らかにする。これらの知見を集約し、今後の装置開発や技術展開に生かすことで、集落規模の持続的水マネジメントが可能な社会の実現に貢献する。

ユッタ・エガース
ドイツガス水道技術科学協会 上級管理者(ドイツ)
ルデック・ブラハ
マサリク⼤学 教授(チェコ)

※氏名に下線のある研究者が研究チームリーダー

※日本人は姓、名の順、外国人は名、姓の順で記載

※名と姓の間には「・」、複合名や複合姓には「=」を使用

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