池谷 裕二(イケガヤ ユウジ) 48歳 (東京大学 大学院薬学系研究科 教授) |
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平成 5年 | 東京大学 薬学部 卒業 |
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平成10年 | 東京大学 大学院薬学系研究科 博士課程修了、博士(薬学) |
平成10年 | 東京大学 大学院薬学系研究科 助教 |
平成18年 | 東京大学 大学院薬学系研究科 講師 |
平成19年 | 東京大学 大学院薬学系研究科 准教授 |
平成26年 | 東京大学 大学院薬学系研究科 教授 |
平成 7年~平成10年 | 日本学術振興会 特別研究員(DC1) |
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平成14年~平成17年 | コロンビア大学 生物科学講座 客員研究員 |
平成18年~平成22年 | 科学技術振興機構 さきがけ研究者(「生命システムの動作原理と基盤技術」研究領域、中西 重忠 研究総括)兼任 |
平成21年~平成23年 | 科学技術振興機構 さきがけ研究者(「脳情報の解読と制御」研究領域、川人 光男 研究総括)兼任 |
平成25年~現在 | 情報通信研究機構 招聘研究員 |
平成16年 | 日本薬学会 薬学研究ビジョン部会賞 |
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平成18年 | コニカミノルタ画像科学奨励賞 |
平成18年 | 日本薬理学会 学術奨励賞 |
平成18年 | 日本神経科学学会 奨励賞 |
平成20年 | 日本薬学会 奨励賞 |
平成20年 | 文部科学大臣表彰 若手科学者賞 |
平成21年 | ニューロクリアティブ研究会 創造性研究褒賞 |
平成25年 | 日本学術振興会賞 |
平成25年 | 日本学士院 学術奨励賞 |
平成27年 | 塚原仲晃記念賞 |
平成29年 | 江橋節郎賞 |
脳AI融合
ネットワークにつながれた環境全体とのインタラクションの高度化
本研究領域では、人工知能(AI)を用いて脳の新たな能力を開拓し、「脳の潜在能力はどれほどか」を問います。
人類はこれまでに文字や電話などさまざまなツールを開発してきました。もちろん脳はこうしたツールの存在を前提に進化してきたわけではありませんが、環境の変化によって新たに能力を発揮し、巧みに適応・活用しています。これは未来においても同様で、脳は将来出合うであろう未知の環境にも適応する能力をすでに持っていると考えられます。
このような背景の下、本研究領域では、研究総括が際立った実績を挙げてきた実験動物における脳研究と、AIを用いた脳の潜在能力開拓の研究をさらに融合・発展させ、現在はまだ引き出されていない脳の能力をAIとの融合によって顕在化、有効活用することを目指します。具体的には、生命倫理に十分に配慮しつつ、ネズミを中心とした動物における実験と、その結果のヒトにおける検証・応用を通じ、次に挙げる4つのアプローチを基調とした研究を展開します。
【アプローチ1】ネズミの脳を情報センサー内蔵チップに接続することで、地磁気や血圧の変化などの本来感知できない環境や身体の情報を脳にフィードバックします。新たな知覚を得ることで、脳の能力や行動パターンがどのように変化するかを調べます。
【アプローチ2】脳が実際に感じているにもかかわらず、個体としては活用できていない情報を、AIを用いて活用し、脳の機能を拡張します。わずかな音の高低やメロディーの違いなど、意識することのできない潜在的な脳内情報をAIで解読して脳にフィードバックすることで、本来ならば獲得できないはずの能力を習得できることを証明します。
【アプローチ3】脳をインターネットや電子機器と連携させ、ウェブ検索や家電操作ができるといったシームレスな脳と環境の接続を実現します。
【アプローチ4】複数の脳の情報をAI技術で連結し、個体間で情報を共有します。言葉や仕草などの古典的なコミュニケーション手段を超えた対話のあり方を模索します。
以上のアプローチを用いて、本研究領域では、AIと脳を融合する基盤技術を構築し、神経・精神疾患治療のみならず、健常な脳の潜在能力の開拓、脳にとってストレスの少ないツール開発などを通じて、人類全体の健康や幸福に貢献することを目指します。
またこうした研究を通じて、脳回路に潜む新たな動作原理や学習則を解明し、脳と機械の学習のルールを直接比較することで、脳の原理を利用したAIの開発などに寄与すると期待されます。
浜地 格(ハマチ イタル) 58歳 (京都大学 大学院工学研究科 教授) |
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昭和58年 | 京都大学 工学部 卒業 |
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昭和63年 | 京都大学 大学院工学研究科 博士課程単位認定退学 |
昭和63年 | 九州大学 工学部 助手 |
昭和63年 | 京都大学 博士(工学) |
平成 4年 | 九州大学 工学部 助教授 |
平成13年 | 九州大学 有機化学基礎研究センター 教授 |
平成17年 | 京都大学 大学院工学研究科 教授 |
この間
平成11年~平成13年 | 岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所 客員助教授併任 |
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平成12年~平成15年 | 科学技術振興機構 さきがけ研究者(「組織化と機能」研究領域、国武 豊喜 研究総括) 兼任 |
平成15年~平成19年 | 科学技術振興機構 さきがけ研究者(「合成と制御」研究領域、村井 眞二 研究総括) 兼任 |
平成20年~平成25年 | 科学技術振興機構 CREST「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」研究領域 研究代表者 |
平成25年~現在 | 科学技術振興機構 CREST「新機能創出を目指した分子技術の構築」研究領域 研究代表者 |
平成26年~現在 | 科学技術振興機構 さきがけ「統合1細胞解析のための革新的技術基盤」研究領域 研究総括 |
平成18年 | 日本化学会 学術賞 |
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平成23年 | Fellow of Royal Society of Chemistry (UK) |
平成26年 | 名古屋シルバーメダル |
平成26年 | Peking University Eli-Lily Lectureship award (China) |
平成29年 | UC Berkeley BASF Lectureship award (USA) |
平成30年 | 日本化学会賞 |
ニューロ分子技術
細胞外微粒子により惹起される生体応答の機序解明と制御
生命科学分野における光操作技術の開発とそれを用いた生命機能メカニズムの解明
自閉スペクトラム症、うつ病、認知症などの神経・精神疾患は、近年国内はもとより世界中で増加の一途をたどっており、総合科学的な立場から見ても現代社会の大きな課題です。これらの鍵を握る神経細胞ネットワークやたんぱく質分子構造に関する研究は、近年大きく発展しつつありますが、それぞれの分子の機能と細胞間ネットワークや神経活動との関係は未解明のままであり、創薬へ展開するには、いまだ大きなギャップが存在します。これを埋め、緊密な分子レベルの相関と議論を可能にする革新的な分子技術の創成が必要とされています。
このような背景の下、本研究領域では、研究総括がこれまでに世界に先駆けて開拓した生細胞有機化学を発展させ、有機化学と神経科学の分野融合を主軸としたアプローチによって、神経系や脳内の情報伝達や細胞間ネットワーク形成において重要な役割を担うシナプス(神経細胞間相互作用のハブ(連結部))を中心に、個々のたんぱく質の分子レベルでの機能やダイナミクスを精密に解明するための神経ケミカルバイオロジー分子技術を確立します。
具体的には、たんぱく質をそれが存在する生細胞環境で狙い通りに修飾できる生細胞有機化学的手法を新しく開発するとともに、標的たんぱく質の機能を自在に制御できる独自の化学的および光化学的手法(化学遺伝学および光化学遺伝学)を開発します。そしてこれらの化学的方法論を、モデル細胞だけでなく、より複雑な培養神経細胞や脳組織、生物個体でも適用できるレベルまで格段に発展させることにより、記憶や神経・精神疾患と直接関連する神経伝達物質受容体やその相互作用たんぱく質の選択的なイメージングや動態解析、あるいは機能制御による神経細胞間相互作用ネットワークの分子レベルでの解析などを実現します。
本研究領域を通じて、ニューロ分子技術とも呼ぶべき新たな基盤技術を確立することにより、記憶などの高次脳機能の分子レベルでの理解など神経科学分野への展開だけでなく、神経・精神疾患といったこれからの人類が克服すべき多くの疾病の診断や治療法開発へとつながることが期待されます。