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別紙2

平成30年度 採択研究課題の概要

研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

各研究課題が最も貢献する「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」をアイコンで示しています。SATREPSでは、SDGsに積極的に対応して国際社会に貢献していきます。

<環境・エネルギー分野>

研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

(気候変動への適応、生態系・生物多様性の保全、自然資源の持続可能な利用、汚染対策などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 オイルパーム農園の持続的土地利用と再生を目指したオイルパーム古木への高付加価値化技術の開発 貢献する主なSDGs
15. 陸の豊かさも守ろう 12. つくる責任 つかう責任17. パートナーシップで目標を達成しよう
研究代表者
(所属機関・役職)
小杉 昭彦 (国際農林水産業研究センター プロジェクトリーダー) 研究期間 5年間
相手国マレーシア 主要相手国
研究機関
マレーシア理科大学
研究課題の概要
本研究は、マレーシアにおける産学官連携をもとに、オイルパーム農園から産出される膨大な未利用バイオマス“オイルパーム古木”(OPT)の7割を占める樹液を、サトウキビジュース並みの高糖度にする熟成技術と、その樹液や繊維を使った多様な高付加価値製品の製造技術を開発することで、持続可能な新産業創出や雇用創出を目指す。また、農園内に伐採、放置されたOPTに起因する病害虫菌の蔓延について検証し、科学的根拠に基づくパーム農園の適正管理手法を提案する。OPTの樹液を最大限に活用することで、ゼロエミッションを可能にする製造プロセスを構築するとともに、OPTの積極的利用によりパーム農園環境の健全化と農園地のリサイクルによる持続的土地利用を促し、無秩序なパーム農園拡大や熱帯林伐採の抑止に貢献する。
研究課題名 ジブチにおける広域緑化ポテンシャル評価に基づいた発展的・持続可能水資源管理技術確立に関する研究 貢献する主なSDGs
2. 飢餓をゼロに 6. 安全な水とトイレを世界中に12. つくる責任 つかう責任
研究代表者
(所属機関・役職)
島田 沢彦(東京農業大学 地域環境科学部 生産環境工学科 教授) 研究期間 5年間
相手国 ジブチ共和国 主要相手国
研究機関
ジブチ大学
研究課題の概要
本研究は、乾燥地において効率的かつ持続可能な水資源の利用・管理手法を確立するため、非常に過酷な気象環境であるジブチにおける水資源の広域的かつ立体的な分布と循環経路を明らかにすることを目的とする。現地調査および衛星やUAV画像から得られた植生の分布や定量的な放牧圧分布と水資源との関係から緑化ポテンシャルを評価し、遊牧民を受益者とする荒廃地緑化地区や都市ゴミを有効利用した粗放的農園造成地区を開発するとともに、森林農業(アグロフォレストリー)により飼料の開発や有用植物の発掘・栽培を行う。これらのパイロットファームにおける実証試験を通して乾燥地に適した農牧業(アグロパストラル)の確立を行う。さらにこれらの成果が展開可能な地域への適用手法を示し、水資源の高効率利用による持続可能なアグロパストラル・システムの広域実装を目指す。

<環境・エネルギー分野>

研究領域「低炭素社会の実現に向けた高度エネルギーシステムに関する研究」

(クリーンエネルギー、気候変動の緩和などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 マレーシアにおける革新的な海洋温度差発電(OTEC)の開発による低炭素社会のための持続可能なエネルギーシステムの構築 貢献する主なSDGs
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに 17.パートナーシップで目標を達成しよう6. 安全な水とトイレを世界中に
研究代表者
(所属機関・役職)
池上 康之(佐賀大学 海洋エネルギー研究センター 教授) 研究期間 5年間
相手国 マレーシア 主要相手国
研究機関
マレーシア工科大学
研究課題の概要
本研究は、海洋の表層と深層の温度差エネルギーが豊富なマレーシアを対象に、海洋温度差発電(OTEC)によって電力を供給する、低炭素で持続可能なインフラシステムを基本とした「マレーシアモデル」の構築を目的とする。具体的には、マレーシアはじめ東南アジアに適した新しい「ハイブリッド方式」のOTECを提案し、蒸発器内に海水を通水せず水蒸気で熱輸送することにより、主要機器であるチタン製熱交換器の材質を低廉化し、水蒸気の凝縮潜熱と作動流体の蒸発潜熱を熱交換させ、熱通過係数を向上させるとともに、海生生物汚れによる性能低下防止技術を確立する。また、OTECで利用した海洋深層水の複合利用として、マレーシアの地域に合った海洋深層水関連事業を中心とした産業構造の「マレーシアモデル」の構築を目指す。さらに、マレーシア工科大学内のOTECセンターと共同研究を行うことで、OJTによるOTEC関連の若手技術者の育成を行う。
研究課題名 無電化農村地域におけるマイクログリッド導入に向けた発電用バイオ燃料油の革新的抽出技術の開発と普及 貢献する主なSDGs
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに9.産業と技術革新の基盤をつくろう
研究代表者
(所属機関・役職)

佐古 猛(静岡大学 客員教授)

研究期間 5年間
相手国 タンザニア連合共和国 主要相手国
研究機関
ダルエスサラーム大学
研究課題の概要
本研究は、地方電化率が低いタンザニアにおいて、革新的な油脂抽出技術を開発して地産の農業残渣を利用したバイオマス発電を実現するとともに、将来の系統連系を見据えた無電化農村地域におけるマイクログリッドによる給電を実証することを目的とする。省エネ・低環境負荷のヘキサン+二酸化炭素膨張液体を使った農業残渣からの油脂抽出技術について、商業化に向けた実証機の開発を行う。得られた油脂はディーゼル発電用燃料として無電化地域の電力供給に用い、併せてマイクログリッド実証によって電力需給に係る課題の抽出を図る。さらに、バイオマス資源の調達に不可欠な各種の作物や農業残渣等の分布・賦存量情報のデータベース化を図り、ロジスティクスの最適化を志向するとともに、環境・経済性評価により事業の成立性を見極める。このような事業形態は、他のアフリカや東南アジアの農村地帯において、持続可能な低炭素社会のモデルになると期待される。

<生物資源分野>

研究領域「生物資源の持続可能な生産・利用に資する研究」

(食料安全保障、健康増進、栄養改善、持続可能な農林水産業などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 スーダンおよびサブサハラアフリカの乾燥・高温農業生態系において持続的にコムギを生産するための革新的な気候変動耐性技術の開発 貢献する主なSDGs
2. 飢餓をゼロに貧困をなくそう
研究代表者
(所属機関・役職)
辻本 壽(鳥取大学 乾燥地研究センター 教授) 研究期間 5年間
相手国 スーダン共和国 主要相手国
研究機関
農業研究機構(ARC)
研究課題の概要
本研究は、乾燥・高温耐性で、高栄養・高品質なコムギ品種を分子育種技術で迅速に開発し、情報通信技術で効果的に普及させることを目的とする。スーダンを含むサブサハラ地域は、今後最も栄養不足人口が増えるが、住民の生活様式の変化によりコムギに対する需要が特に高まっている。しかし、乾燥・高温環境が生産の障害となり、その多くを輸入に頼っている。そこで、これまでの研究で開発した乾燥・高温耐性コムギ系統を実験材料とし、耐性の遺伝様式と分子基盤を解明し、気候変動予測に対する成長モデルを作成する。また、不良環境下でも栄養や品質の劣化しない系統を探索する。この系統を利用して実用品種を開発するため選抜マーカーを開発する。これらを可能にするために、分子育種施設とイノベーションプラットフォームを設置し、それを担う人材を養成する。気候変動に適応するコムギ遺伝資源を開発・利用することにより、この地域の食料安全保障の道を開く。
研究課題名 世界戦略魚の作出を目指したタイ原産魚介類の家魚化と養魚法の構築 貢献する主なSDGs
2. 飢餓をゼロに14. 海の豊かさを守ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
廣野 育生(東京海洋大学 学術研究院 海洋生物資源学部門 教授) 研究期間 5年間
相手国 タイ王国 主要相手国
研究機関
タイ農業協同組合省水産局
研究課題の概要
本研究は、タイの在来魚介類の中から世界戦略魚を家魚化し、その養殖法を開発することで食料安全保障に寄与することを目的とする。世界で消費される食用水産物の半分は養殖由来であることから養殖による食資源生産は重要であるが、世界中で養殖されている魚介類の多くは生産国には存在しない外来種であり、自然界への逃亡による生態系への影響が一部の地域では問題になっている。そこで、タイ在来種のアジアスズキとバナナエビを国際市場で世界有数の主要水産物として扱われる養殖種とするために、家魚化を含む両種の生産技術を構築する。養殖対象種としての有用形質を選抜するためのゲノム育種と、ワクチンなどによる感染症防除法の開発を実施する。さらに、将来のさらなる有用形質の選抜を想定し、多様な野生個体の遺伝資源と本課題で作出した各品種を組織・細胞レベルで永久保存し、これらの材料からいつでも個体を創りだす技術開発を行う。

<防災分野>

研究領域「持続可能な社会を支える防災・減災に関する研究」

(災害メカニズム解明、事前の対策、災害発生から復旧・復興までSDGsに貢献する研究)

研究課題名 エチオピア特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土壌改質剤の開発と運用モデル 貢献する主なSDGs
9.産業と技術革新の基盤をつくろう 8. 働きがいも経済成長も17. パートナーシップで目標を達成しよう
研究代表者
(所属機関・役職)
木村 亮(京都大学 大学院工学研究科 教授) 研究期間 5年間
相手国 エチオピア連邦民主共和国 主要相手国
研究機関
アジスアベバ科学技術大学
研究課題の概要
本研究は、エチオピアに分布する膨張性粘性土など特殊土の特性により、雨季に車両走行不能となり、移動や物流が制限されてしまう道路災害の低減に資するため、特殊土の特性を明らかにした上で、特殊土改質メカニズムを解明し、在来植物由来のセルロース系土壌改質剤を開発することを目的とする。さらに、改質土を利用した労働集約的な道路整備手法を体系化し、この手法を用いて、雨季の通行性の維持や早期復旧に向け、行政・地方大学・コミュニティが連携して持続的に運用する道路防災・減災モデルを開発する。本モデルは、特殊土地盤の広がる他地域においても適用性が高いと期待されるため、相手国政府に全国展開に向けた政策提言を行う。本研究で開発した現地生産可能で環境負担が少ない土壌改質剤、ならびに道路整備法を用いて農村部を全天候型道路網で接続することにより、将来的には社会経済活動が活性化され、持続可能な開発に寄与することを目指す。