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科学技術振興機構報 第1293号

平成29年11月13日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
ときわバイオ株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、ときわバイオ株式会社(本社:つくば市、代表取締役 松﨑 正晴、以下「ときわバイオ」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施しました。

ときわバイオは、JSTの「シーズ発掘試験注2)平成20年度「新規遺伝子発現系を使ったバイオ医薬品製造方法の開発」、「大学発新産業創出プログラム(START)注3)平成25年度「ステルス型RNAベクターを使った再生医療用ヒト細胞創製技術」に採択され、その研究開発成果をもとに平成26年12月22日に設立された産業技術総合研究所発のベンチャー企業です。

遺伝子導入・発現ベクターは、遺伝子治療などを行う際に導入したい遺伝子(以下「目的遺伝子」という)を標的細胞内に運び込み発現させるために用いられ、さまざまな種類があります。目的遺伝子が染色体に組み込まれるタイプのものは、元々の遺伝子が損傷されたり癌化したりする挿入変異の問題や低い導入効率の問題が、目的遺伝子が染色体に組み込まれないタイプのものは、目的遺伝子の発現期間が一過性であるといった問題がありました。

ときわバイオでは、これらの問題を解決する「ステルス型RNAベクター(SRV)」を開発しました。SRVは目的遺伝子が細胞質中で長期間安定して発現するよう設計されており、染色体への組み込みもなく挿入変異を起こしません。また、大きなサイズの遺伝子や最大10個もの多数の遺伝子を搭載でき、遺伝子治療の対象疾患の拡大や、ワクチン製造で要求されるような短期間での多種類のたんぱく質の発現も可能となります。さらに、不要になったときにはRNA干渉などの方法により消去できるといった特徴があります。

ときわバイオでは、臨床グレードのiPS細胞作製用や遺伝子治療用SRVの研究開発を推し進め、SRVを用いて今後の進展が期待されている再生医療や遺伝子治療創薬の産業化支援ビジネスを展開していく計画です。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。(ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage Companie)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名ときわバイオ株式会社
設立日 平成26年12月22日
本社所在地茨城県つくば市
代表取締役松﨑 正晴
事業内容遺伝子治療用医薬品、再生医療関連製品、バイオ医薬品、抗体医薬品、研究用試薬等の研究開発・製造・販売

<事業展開>

疾患関連遺伝子を搭載した遺伝子治療用ステルス型RNAベクターについて、製薬企業との共同開発や、製薬企業へのライセンスを行うビジネスモデルを展開し、将来的には希少疾患をターゲットにした遺伝子治療用医薬品の自社開発も目指す。

また、骨髄損傷やパーキンソン病などの患者に対して、iPS細胞からの分化誘導を経ず遺伝子を使って局所で直接に必要な細胞を作る(ダイレクトリプログラミング)ための複数因子を搭載したベクターを開発し、患者への侵襲が少なく低コストな次世代の再生医療の実現を目指す。

図

<用語解説>

注1) 第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができます。
注2) シーズ発掘試験
大学・公的研究機関などの研究成果を発掘し、研究シーズや企業ニーズの探索やマッチング、研究シーズの育成、研究成果の各種制度や企業への橋渡しを専らの業務とするコーディネータなどが発掘した、知的財産権の取得が期待される、もしくは、知的財産権をすでに取得し、実用化に向けて発展が期待される研究シーズの実用化を促し、コーディネータなどの活動を支援することを目的として実施していた事業です。
注3) 大学発新産業創出プログラム(START)
事業化ノウハウを持った人材(「事業プロモーター」)ユニットを活用し、大学等発ベンチャーの起業前段階から、研究開発・事業育成のための公的資金と民間の事業化ノウハウなどを組み合わせることにより、リスクは高いがポテンシャルの高い技術シーズに関して、事業戦略・知財戦略を構築しつつ、市場や出口を見据えた事業化と、それによる、大学等の研究成果の社会還元を実現しつつ、持続的な仕組みとしての日本型イノベーションモデルの構築を目指す事業です。

<お問い合わせ先>

<ときわバイオ株式会社に関すること>

ときわバイオ株式会社
担当:松﨑
〒305-0047 茨城県つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センターG棟
Tel:029-893-6040
E-mail:
ホームページURL:http://www.tokiwa-bio.com

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail: